フラッシュ・メモリの高速化技術と最新の不揮発性メモリの動向 ―― フラッシュの次を担うのは、フラッシュかそれとも...

柴田茂則,太田豊

tag: 半導体 電子回路

技術解説 2008年7月31日

 フラッシュ・メモリは原理的に書き換え回数制限,データ・リテンションの問題があります(コラム1).自動車用途など信頼性が必要な場合には,数セル1ビット構成にしたり,ECC(Error Checking and Correcting)回路を付けたりすることで信頼性を確保しています.図15に示すナノ・クリスタル・メモリ(6)は,フラッシュ・メモリ・セルのフローティング・ゲートを金属またはシリコンのナノ・クリスタルに置き換えたものです.データ・リテンション特性の改善,フローティング・ゲート絶縁膜のスケーリングを狙ったものです.データを保持する原理が同じであるため,現在のフラッシュ・メモリに対して優位性があまり明らかではありません.またON/OFF比が小さい傾向があり,まだ実用化されていません.しかし,米国Freescale Semiconductor社は2008年に出荷を開始すると発表しています.

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図15 ナノ・クリスタル・メモリの断面模式図(6)
フローティング・ゲートをナノクリスタルと呼ばれる粒子状の導電体に置き換えたもの.フローティング・ゲートは酸化膜の1個所でもリークがあると電荷が抜け出してしまうが,ナノクリスタル・メモリは1個所リークがあってもほかの電荷は保持される.

(2)FeRAM(強誘電体メモリ)

 FeRAMは強誘電体の分極現象を使った不揮発性メモリで,量産が始まろうとしています.製品数はまだ少なく,ICカードなど限られた用途で使用されています.多くの半導体メーカは,LSIを試作したという論文を発表しています.1トランジスタ1キャパシタ構成なのでフラッシュ・メモリに対してセル面積が大きくなります.容量当たりのコストが高く,製品として出荷しているメーカは富士通など一部に限られています.

 FeRAMのメモリ・セルの例を図16に示します(7).セルの強誘電体キャパシタに充電されていた電荷分が,セルの読み出し時に流れる電流となります.電流はDRAMよりは大きくなりますが,トランジスタのゲート電位により読み出し電流を流すフラッシュ・メモリよりは小さくなります.DRAMと同様のセンス・アンプ回路技術が用いられています.

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図16 FeRAMのメモリ・セル(7)

 破壊読み出しであるため,読み出しによっても素子が劣化します.マイコン用メモリなど頻繁にアクセスが起こる場合には注意が必要となります.1トランジスタ2キャパシタ構成にして,非破壊読み出しにしたという発表もされています.1トランジスタ構成のセルは1960年代に考案されていますが,誘電体のゲート・リーク電流が大きくデータ・リテンション特性が悪いため実用には至っていません.

 低電圧動作が可能なため,チャージ・ポンプ回路が不要です.そのため,電源投入してから読み書きできるようになるまでの時間がフラッシュ・メモリに比較して大変短いという特長があります.例えばICカード用途では,電波から受電してから通信を始めるまでの時間を短くできます.カードの動作期間中の送受信回数を増やすことによって,送受信エラーを減らすことができるといわれています.メモリ・セル自体の書き込み・消去速度もフラッシュ・メモリに対して高速です.

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