フラッシュ・メモリの高速化技術と最新の不揮発性メモリの動向 ―― フラッシュの次を担うのは、フラッシュかそれとも...
現在,プログラムやデータを格納しておく不揮発性メモリとしてフラッシュ・メモリが幅広く使われており,大容量化が進んでいる.ここでは最近のフラッシュ・メモリの高速化技術について解説する.また,書き換え回数などフラッシュ・メモリでは実現できないような性能を備えた,さまざまな次世代の不揮発性メモリを紹介する. (編集部)
1.フラッシュ・メモリの現状と高速化・小型化の必要性
● フラッシュ・メモリとは
フラッシュ・メモリは,1980年代後半に東芝の舛岡富士雄氏(現東北大教授)らが最初に発明し,命名した,書き換え可能な不揮発性メモリです.フラッシュ・メモリが発明される以前の不揮発性メモリとしてはEPROM(Erasable and Programmable Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)が存在しました.これらはビット単価が高く,書き換えに高い電圧や消去に紫外線が必要でした.
フラッシュ・メモリは,1ビット当たり1トランジスタの構成になっており,EEPROMよりビット単価が安くなっています.また電気的に消去可能なため,紫外線消去型のEPROMに比べて使い勝手が格段に良くなっています.生産高は全世界で2兆円(2007年現在)を超えており,市場規模としてDRAM(Dynamic Random Access Memory)と比較できるようになりました.今後も成長する市場として,参入メーカも多くなってきています.
フラッシュ・メモリには発明当初より,システムのソフトウェア格納を目的としたNOR型と,ストレージ(ディスク・ドライブ)の置き換えを目的としたNAND型がありました.最初に市場に受け入れられたのはNOR型です.
NOR型フラッシュ・メモリは,マスクROMや紫外線消去型のEPROMの置き換えとして普及しました.1990年代の後半は,携帯電話のソフトウェア格納用として急速に数量が伸びました.マスクROMはデータのマスクからROMを作成します.フラッシュ・メモリよりも安くなりますが,マスクROM化する時点でソフトウェアが確定している必要があります.しかし多くの場合,開発初期には格納されるソフトウェアが確定できていません.製品出荷初期にフラッシュ・メモリを使い,その後マスクROMに置き換えていくことが一般的です.最近の製品はモデル・チェンジまでのサイクルが短くなっています.コストを削減するため,マスクROM化しないことも多くなっています.
一方,NAND型フラッシュ・メモリはNOR型よりも集積度が高く,メモリ・カードやUSBフラッシュ・メモリなどで大量に使われています.NAND型フラッシュ・メモリが開発された当初は,ハード・ディスク・ドライブ(HDD)の技術進歩が速く,ストレージ市場の置き換えがあまり進みませんでした.2000年代に入ってからはNAND型フラッシュ・メモリのビット・コストが下がり,HDDからの置き換えが進んでいます.
NAND型とNOR型はビット単価や性能に一長一短があります.所望のシステムを低コストで実現するためには,実現しようとしているシステムのハードウェア構成を考えて,最適な不揮発性メモリを選択する必要があります.