携帯型機器向け電源ICの低消費電力技術 ――携帯型機器とともに歩むLDO電圧レギュレータ技術の軌跡
ここでは,携帯型機器向けの電源IC(CMOS LDO)に採用されている低消費電力技術について解説する.最近の電源ICは,CPUなどが備える低消費電力モードに対応している.外部負荷を監視しながら,これらのモードを自動的に切り替える電源ICも使われている.また,携帯型機器の小型化・多機能化にけん引される形で,低入力電圧動作,低ON抵抗,高リプル除去率を実現する電源ICの製品化が進んでいる. (編集部)
「低消費電力設計」は,携帯型機器を開発する際にもっとも重要なキーワードとして取り上げられることばです.低消費電力化を進めることで,電池寿命を延ばせるだけでなく,電池の小型化や,それに伴う機器そのものの小型化,軽量化を実現することが可能となるからです.
本稿では,携帯型機器の低消費電力化設計について,とくに電源ICの働きや技術の変遷に焦点を絞って説明していきたいと思います.
● 携帯型機器の低消費電力化を支えるCMOS LDO
携帯型機器(実は,すべての電子機器について言えることだが...)の中で使われている半導体について考えてみると,非常に大ざっぱですが,次の2種類に分けることができます.
a) その製品のさまざまな機能を実現するために必要とされるデバイス
b) a)のデバイスが正常に動作するために必要な電力を供給するデバイス,あるいはその動作を監視するデバイス
a)に属するデバイス群は,機器を開発するうえで必要不可欠なものであり,いわば主役となるものです(以降,これを「メイン・デバイス」と呼ぶ).もちろん低消費電力設計を目標とするうえで,これらのデバイスにも「低消費電力であること」が要求されます.しかし,現状,回路の高速化に伴って,メイン・デバイスの自己消費電流(デバイスそのものの消費電流)は増加する傾向にあります.ただし,いくら消費電流が増加しようとも,「これらのデバイスを省く」という選択肢はありえず,かならず機器に搭載されることになります.