携帯型機器向け電源ICの低消費電力技術 ――携帯型機器とともに歩むLDO電圧レギュレータ技術の軌跡
● スリープ・モードに対応できていなかった
携帯型機器の機能が複雑になってきたことから,低消費電力化を実現するために,ブロックごとの細かい電源制御が重要視されるようになってきました.多くの場合は,単純に電源ICをON/OFFすることで電源制御を行うことになります.しかし,メイン・デバイスから3モードの電源制御が要求される場合がでてきました.これは,メイン・デバイスが,ON,スリープ(sleep),OFFの三つのモードを持っているためです.
では,それぞれのモードでどのような特性が電源ICに要求されるのかを考えてみたいと思います.
- ONモード――動作するために必要な電圧と電流を供給するだけでなく,負荷電流が大きく変動する場合があるため,負荷過渡応答特性に優れていることが望まれる.また,入力過渡応答特性やリプル除去率注3に優れていることが求められることも多い.
- スリープ・モード――動作を保持できるだけの一定の電圧と電流を供給できればよい.自己消費電流については,極力小さいものが求められる.
- OFFモード――超低消費電流のスタンバイ機能が必要とされる.
一般に,電源ICはONとOFFの2モードしか備えておらず,一つの電源ICで上記の3モードに100%対応することは非常に困難です.自己消費電流の非常に小さいLDOが開発されていれば問題ないのですが,残念ながら,現時点ではこのような電源ICは存在しません.ではどのように対応すればよいのでしょう?ここで,二つの対処法が考えられます.
注3;電源の入力にリプルが重畳されたとき,出力でそれをどの程度除去できるかを示す値.周波数や内部回路により,実力値が異なる.