携帯型機器向け電源ICの低消費電力技術 ――携帯型機器とともに歩むLDO電圧レギュレータ技術の軌跡
ここで,DC-DCコンバータによって,直接メイン・デバイスへ電圧を供給するという方法も考えられます.しかし,最近では低電圧動作のブロックが増えており,それをすべて個別のDC-DCコンバータで給電しようとすると,たいへんなコスト高になってしまいます.
このため,メインのDC-DCコンバータの出力にLDOをいくつかぶら下げる方式がとられています.降圧DC-DCコンバータは,図6のように分配器のような役割を果たします.これにより,消費電力の細かい最適化が可能となり,安定した電圧を供給できるようになります.
● 1V電源時代のLDOが抱える三つの課題
では,DC-DCコンバータの出力電圧(LDOの入力電圧)は,何Vに設定するのが適切といえるのでしょう? 低消費電力を目標としているので,DC-DCコンバータにより,できる限りメイン・デバイスの動作電圧付近まで電圧を下げることが理想です.そうすれば,2段目のLDOの熱損失をきわめて小さくできるからです.
ではこのときの2段目のLDOには,どのような特性が求められるのでしょう?
以下の二つの要求が考えられます.
- 低電圧動作――DC-DCコンバータの出力電圧で動作しなければならないため
- 入出力電圧差が小さい――ON抵抗の小さいドライバが必要になる.これは,「ON抵抗×出力電流」が,そのまま入出力電圧差になるため
低消費電力化を実現するには,この二つの項目を満足することが必須です.しかし,こうした特性を満たすCMOS LDOは,これまでありませんでした. そこで筆者らは,このような特性を持つCMOS LDOの開発に取り組みました.