携帯型機器向け電源ICの低消費電力技術 ――携帯型機器とともに歩むLDO電圧レギュレータ技術の軌跡
● 低入力電圧に絞ることで三つの課題をクリア
これらの課題はごくあたりまえの事がらなのですが,あらためて解決しようとすると,非常に難しい問題でした.これらの課題をクリアする重要なかぎとなったのは,筆者らが長年取り組んできたアナログ・ディジタル混載(ミックスト・シグナル)LSIの開発技術でした.
ページャ(ポケベル)が全盛だった時代から,通信業界では低消費電力化が強く要求されており,筆者らのCMOS電源ICはその要求にこたえてきました.また,その一方で,ディジタルLSIにおいても筆者らは,通信分野と深いつながりを持っていました.筆者らの技術は,通信手段がページャから携帯電話へと変わっていった後も,通信業界と深くかかわり続けています.
携帯電話は小型化・軽量化が進みましたが,これに伴って基板面積が削減されていきました.その中で出てきた要求が,部品の集積化(複合化)でした.そして,おもに電源ICの1チップ化が進みました.携帯電話のさらなる小型化や,カメラなどのさまざまな機能を取り込むことにより,基板面積に関する制約は年々厳しくなりました.ディジタルLSIとアナログIC(電源IC)の両面で通信分野とかかわってきた筆者らは,次に要求されるのはアナログ・ディジタル混載だろうと考え,こうしたLSIの開発にいち早く取り組みました.これは,動作電圧の上限を限定できる携帯電話という市場に特化することによって生まれた技術と言えます.この技術を汎用の電源ICに応用するという発想が,製品化を進めるうえでのかぎとなりました.