携帯型機器向け電源ICの低消費電力技術 ――携帯型機器とともに歩むLDO電圧レギュレータ技術の軌跡

池田亜紀,小林貴司

tag: 組み込み

技術解説 2006年11月21日

 仕様を決めるにあたっては,まず,低入力電圧に絞ることを考えました.これまでの電源ICは汎用製品という位置づけだったため,ある程度広い入力電圧範囲に対応する必要がある,ということが前提とされていました.しかし,このような既成概念にとらわれるのではなく,電源回路の2段目(DC-DCコンバータの後段)に配置されることを前提として,入力電圧範囲を広げず,低電圧動作に重点を置くことにしました.また,ディジタルLSIに使用していた微細なプロセスを利用することにしました.

 最終的に,以下の特性を備える電源IC(R1172/73)を開発しました.

  • 低入力電圧動作:1.4Vから動作可能
  • 低ON抵抗 :320mΩ,Vin=1.5V
  • 高リプル除去率:60dB,Vout=1.5V

 この電源ICを開発している間に,DC-DCコンバータの高周波化が進み,リプルの除去については外付け部品のコンデンサに任せる領域になりつつあります.今後,さらなる入力電圧の低電圧化に対応することも,すでに理論的には可能となっています.「これ以上の低電圧になったとき,低消費電流との両立のために何ができるか?」を考えることが,今後の電源ICメーカとしての筆者らの課題になってくると思います注4

 注4;ここで述べたこと以外にも,逆流防止回路のリーク電流を抑えたもの,OFF時のすばやい電源立ち下がり特性を実現するための自動ディスチャを抑えながら,立ち上がりが遅くならないような回路を搭載したものなど,さまざまなくふうを取り入れて,今日の製品ラインナップとなっている.


こばやし・たかし
いけだ・あき
(株)リコー 電子デバイスカンパニー 製品統括部
<筆者プロフィール>
小林貴司.入社当初は電源ICの設計を行っていたが,性格的に合わないことを自覚し,FAEとして活動を始め,今に至る.不必要にがっちりとした体型と短髪のため,お客さま訪問時に,守衛所にて時々けげんな顔をされることがないとはいえない.
池田亜紀.入社当初は,ディジタルICのテスト開発を担当.その後アナログ電源担当となり,半導体営業の必要条件である汎用電源の技術サポートとマーケティングを担当している.

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