今,フラッシュFPGAが求められている理由 ――10年近い紆余曲折を経て,ようやく日の目を見た"大器晩成"技術
● 競争の時代へ:CPLDを置き換える
1980年代後半から1990年代前半にはPLD/FPGA市場に新規参入するメーカが多く,新しいデバイス・アーキテクチャも次々に提案されました.1980年代に不揮発PLD,SRAM FPGA,アンチヒューズFPGAが登場した後は,それぞれ複数の競合製品が現れて競争を繰り広げました.先発メーカと競合メーカが特許侵害訴訟で争うことも多く,CPLDに関するAltera社と米国AMD社(後に米国Vantis社,現在のLattice社)の訴訟,SRAM FPGAに関するAltera社とXilinx社の訴訟,アンチヒューズFPGAに関するActel社と米国QuickLogic社の訴訟などがよく知られています.
一方,1990年代後半から2000年代前半にはFPGA/PLD市場から撤退するメーカが多くなり,また淘汰や買収によってメーカの集約や寡占化が進みました.Zycad社のフラッシュFPGAが登場した1995年はちょうどその切り替わりの時期であり,そのためか,フラッシュFPGAには長い間競合製品が現れませんでした.
2000年に,FLEXLogicと同様にプロダクト・ターム構造でSRAMを記憶素子に用いたCPLDとして,Cypress社の「Delta39K」が登場しました(図7).Delta39Kは,FLEX LogicよりさらにSRAM FPGAに近づいたデバイスで,コンフィグレーション用の不揮発メモリを外付けして動作します.ただし,従来の不揮発CPLDのユーザにも受け入れられるように,CPLDチップとコンフィグレーション用のフラッシュ・メモリ・チップを同一パッケージに封止したモジュール構成の不揮発デバイスが用意されていました.これも,間接型フラッシュFPGAの先駆けの一つと言えるでしょう.
クラスタ数 | 2~42 |
マクロセル数 (Dフリップフロップ数) | 256~5,376 |
ユーザ・ゲート数 | 15,000~350,000ゲート |
最大RAM容量*4 | 36K~860Kビット |
最大I/O数 | 160~540 |
*1 LB(Logic Block)は16マクロセルをもつ基本PLDブロック.
*2 クラスタは,8個のLBと2個のRAMブロックをPIMで接続し,さらに1個のデュアルポートRAMを内蔵.このクラスタを複数搭載する階層型CPLDアーキテクチャ.
*3 フラッシュ・メモリはCPLDとは別チップ.CPLDチップは単純なCMOSプロセスで,SRAM FPGAに匹敵する高集積と低コストを実現.
*4 シングルポートRAMとデュアルポートRAMの合計.