つながるワイヤレス通信機器の開発手法(12) ──ASICを設計する(後編) CPUと周辺回路のインターフェース回路の実装
2.内部バスの標準規格,OCP vs. AXI
現在,システムLSI内部のバスとしては,英国ARM社が提唱する「AMBA(Advanced Microcontroller Bus Archi- tecture)」が主流である(コラム「AMBAについて」を参照).しかし,動作周波数の向上や,一つのシステムにおけるCPUなどのバス・マスタ・デバイスの増加(例えば,冒頭のOMAPの場合,ARM925とTMS320C55xの二つ)といった問題により,新しいバス方式の必要性が叫ばれている.
AMBAに代表されるこれまでの内部バスは,各バス・マスタの信号をマルチプレクサで統合して,衝突が起こるタイミングをバス・アービタ(調停回路)で回避する方法をとってきた.しかし,この方法ではバス・マスタの数が増えるにつれて調停回路が複雑になり,かつ,バス全体,ひいてはシステム全体の動作速度が落ちてしまうという欠点がある.特に複数のバス・マスタが搭載されるシステムLSIが多くなってきている今日では,この欠点が目立つようになってきている.
これらの欠点を克服する規格として今年(2003年)になってAXI(Advanced eXtensible Interface),OCP(Open Core Protocol)などが提案された.AXIとOCPは,ともにVSIA(Virtual Socket Interface Alliance)が策定したシステムLSI用インターフェース仕様であるVCI(Virtual Component Interface)から派生した仕様である.VSIAは,システムLSI向けに業界標準のインターフェース仕様の定義,開発,認証,試験などを行い,その普及を目的としている団体である.その標準仕様には,データ・フォーマット,テスト手法,インターフェースが含まれる.
AXIとOCPはそれぞれ異なる規格であるが,現在,ARM社がAXIを,米国MIPS Technologies社がOCPを推す形になっている.いずれにせよ,現時点ではAMBAのAHB(Advanced High-performance Bus),APB(Advanced Peripheral Bus)をベースに開発し,近い将来(おそらく2年後くらい)には上記のいずれかの規格に従って開発することになるだろう.