搭載機能が増えても車体重量を増加させないワザ ――「安全性」と「快適性」を低コストで実現する一つの解決策「LIN」
● 低コスト車載ネットワークを実現するための規格を策定
このような状況の中,欧州の自動車メーカは,将来,車載ネットワークにさまざまなプロトコルが存在することになり,その開発や保守などが問題になると懸念していました(図2).各社が独自に開発しているローエンド・ネットワークを標準化できないかどうかを模索し始め,2000年3月に「LIN(local interconnect network)コンソーシアム」を正式に立ち上げました(図3,コラム「LINの歴史と背景」を参照).LIN規格では,通信プロトコル,通信媒体,開発ツール間のインターフェース,ソフトウェア・プログラミングのためのインターフェースなどが定義されています(図4).
LINの大きな目的は,その仕様書の冒頭に書かれているように「低コストの自動車ネットワークのために考えられたシステム」を実現することです.もちろん,すでに存在している自動車用の多重ネットワークを単に置き換えるのではなく,それらを補完していくことを重視しています.また,さらなる品質の向上やコスト削減のために,LINは階層的な車載ネットワーク実現の可能性を持っています.
図2 車載ネットワークを共通化しないと...
ワイヤ・ハーネスの使用量を抑えるために,自動車メーカは独自のネットワーク・プロトコルを開発した.しかし,車種が変わるたびにプロトコルを変更しなければならないケースも多々あり,開発や保守に問題が出てくる.これを解決するためには車載ネットワークの標準化が必要となる.
図3 LINコンソーシアム
発足当初,コア・メンバはドイツAudi社,ドイツBMW社,ドイツDaimlerChrysler社,米国Motorola社,スウェーデンVolcano Communications Technologies社(現在,Volcano Automotive Group),ドイツVolkswagen社,スウェーデンVolvo社の7社だった.その後,アソシエイツ・メンバとして自動車メーカや部品メーカ,半導体メーカが参加している.
図4 LINプロトコル
LINのプロトコルはOSI基本参照モデルに従って階層化されている.物理層,データリンク層,ネットワーク層に対応する.