搭載機能が増えても車体重量を増加させないワザ ――「安全性」と「快適性」を低コストで実現する一つの解決策「LIN」
一方,このミラーのスレーブ・ノードのソフトウェアでは,大きく分けて次の二つの機能を実現します.
- ミラー機能の実行
- LIN通信の実行
この場合,LINのプロトコル処理はソフトウェアで行います.その主な構成は,
- LINフレームの処理
- マスタから送信されるヘッダの解釈
- レスポンスの受信と送信
- LIN通信のエラー処理 などです.
通信プロトコルを簡単に述べると,まずマスタ・ノードが送信したヘッダは,LINバス,トランシーバを介してマイコンのRx(受信)端子に入力されます.そのあとは"Sync Break"という信号が,これからLINのフレームが入ってくることをマイコンに知らせます.次に来る同期フィールド(信号)で同期がとられ,エラーがなければUART/SCIに入力されてポーリングか割り込みで通知します.同期の次は識別子(ID)を読み込み,それを解釈してデータを受信するのか,あるいは送信するのかを決めます.
例えば,フォールド(格納)のスイッチが押されていることをマスタが検知し,このスイッチがミラーを折り畳む動作を要求していると判断したら,そのIDを含んだヘッダを送信します.スレーブはそれを受けて格納モータを起動させてミラーを格納します.次に,マスタは格納が終了したかどうかを確認するために,ヘッダを送信してスレーブにレスポンスを要求します.終了していればスレーブはそのデータを送ります.マスタはそのデータを受信して通信を終了します.
マスタ側のソフトウェアは,LINクラスタのスケジュール管理やネットワーク管理,またLIN 2.0では診断などが入ってくるので,さらに複雑になります.
さとう・みちお
モトローラ(株)
<筆者プロフィール>
佐藤道夫.1982年にモトローラに入社し,半導体事業部に所属.品質保証や営業を経験し,1992年からコントロール&ネットワークのアプリケーション・エンジニアとして,ロンワークスの普及に従事する.現在は,半導体セクタートランスポーテーション&スタンダードプロダクツグループにおいて,主に車載向けのネットワークのプログラム・マネージャを担当している.