搭載機能が増えても車体重量を増加させないワザ ――「安全性」と「快適性」を低コストで実現する一つの解決策「LIN」
1 「事故を起こさず,快適に」が大きな課題
このような状況の中,自動車を取り巻く市場の要求としては,以下に挙げるものが考えられます(図1).
- クリーン環境:CO2や排気削減,環境規制への対応技術
- 快適走行:運転支援,渋滞回避
- 予防安全:事故件数減少,安全走行技術
一方,自動車業界には次のような課題があります.
- 新しいシステムや機能が増加している
- プラットホーム化(アーキテクチャやモジュールの共通化)を進めているが,車種は増えている
- より精密な制御や,重量の軽減が求められている
市場の要求を反映しつつ,上記の課題を解決するためには三つの方法が考えられます.
- システムを実現するためのソフトウェアを高速に実行できる半導体技術・製品の展開
- 拡張性があり,構築しやすく,低コストのシステムを実現するオープンなインターフェース
- 機械的制御や油圧制御など,メカの電気制御を実現するメカトロニクス技術の展開
こうした中で注目されている技術が"X by Wire"です.X by Wireでは,従来の機械的な機構による制御ではなく,電子的(モータ)制御によって精度を向上させます.
X by Wire技術の応用としては制御シャーシ系のアプリケーションが先行していますが,より広義に解釈するとパワートレイン(動力伝達)系やボディ(車体)系にも及びます.例えば,パワートレイン系ではすでに実現されている「スロットル・バイ・ワイヤ(アクセル・バイ・ワイヤとも言う)」があります.これは,電気信号に変換したアクセル・ペダルの踏み込み量をエンジンECU(電子制御ユニット)で計算し,エンジンのスロットル・バルブの開閉量を制御して自動車のスピードを調節するというものです.
図1 自動車を取り巻く市場の要求
国内における自動車の普及率が1.7人に1台(乗用車に限定すると2.4人に1台)となった現在,安全性の向上や環境負荷の削減などが大きな課題となっている.