搭載機能が増えても車体重量を増加させないワザ ――「安全性」と「快適性」を低コストで実現する一つの解決策「LIN」
● いつでも,だれにとっても快適な自動車であるために
次に,運転者や同乗者の「快適性」という面から考えた場合,どのような課題があるのでしょうか.快適性への要望は,運転者や同乗者の年齢,性別,体格など,さまざまな要素が関係します.また,自動車は世界中のあらゆる場所で使われます.さらに,四季を通じて1年中使用されます.千差万別の要望にこたえ,あらゆる状況において快適性を提供していくということが自動車メーカには要求されるのです.
快適性を考えた場合,乗りごこちを左右するものは主にシャーシ系のシステムです.しかし,最近では「コンフォート(comfort;快適性を重視したシートやタイヤなど)」というキーワードが各自動車メーカのカタログをにぎわせており(写真2),コンフォートについては,主にボディ系のシステムがその役割を担うと思います.この代表例としては,HVAC(heating,ventilation,and air-conditioning;車室内空調)や,運転手にとってのベスト・ポジションを実現するシートの位置調整,ドア・ミラーやインナ・ミラー注1の角度調整などの適正化が挙げられます.
注1;インナ・ミラーは「バック・ミラー」とも呼ばれる.
(a)インパネ (b)1列目の座席
写真2 キーワードは「コンフォート」
快適性を全面に出す自動車も増えてきた.例えば,本田技研工業の「オデッセイ(写真はLタイプ)」ではメーカ・オプションとして,「コンフォート・パッケージ」を提供している.1列目の左右と後部座席のそれぞれについて温度調整できたり,周囲の明るさを検知してライトの点灯/消灯を自動で行うなどの機能がある.また,運転席は前後/高さ/リクライニングを電動で調節できる.