組み込みソフトウェア・テスト・クライシスの「傾向と対策」 ――「品質」をつねに念頭に置きながらソフトウェアを開発する
●同じテストはできるだけ繰り返さない
開発の後半になってくると,品質に対する不安を感じ,過去に行ったテストを再度行いたくなってきます.「念には念を入れる」というのはよいことですが,工数の余裕がない状況で,過去に行ったテストを繰り返すことが妥当かどうかは疑問です.
工数に余裕があり,すべてのテストが終了している場合は,一度行ったテストを再度行ってもよいかもしれません.しかし,同じ作業の繰り返しはむだな工数になることもあるので,必要性について十分に議論するべきでしょう.
開発を通して,同じテストを繰り返し行って,現れる欠陥の数からソフトウェアの品質の推移を計測することも可能です.ソフトウェアの品質はコード中の欠陥の密度で考えることが多いので,同じ負荷をかけて品質の推移を確認するのは有効な方法です.
ソフトウェアは時間とともに変化しており,変更を重ねるたびにその品質が変化していきます.そのため,過去にテストをパスしたのに,再度テストするとうまく動かない,ということがあります.このような状況をなくすにはどうしたらよいのでしょう.
ソフトウェアの変化には,要求そのものが変わる仕様変更による変化と,欠陥が発生し,その欠陥に対処するための修正による変化があります.過去のテストで合格したときのソフトウェアの構成と,今のソフトウェアの構成が異なるため,上述のような状況が発生します.この問題については,仕様変更と欠陥対策の2点から,それぞれ調査していく以外に適当な解決策がありません.