組み込みソフトウェア・テスト・クライシスの「傾向と対策」 ――「品質」をつねに念頭に置きながらソフトウェアを開発する
●要求分析が完ぺきとは限らない
システムの欠陥は，えてして要求分析の不良から起こります．要求分析の段階ではまったく気がつかなかった仕様の欠陥が，設計段階でも見落とされ，実装の段階で初めて気づくといった状況です．
もしもテスト担当者がこうした抜けや漏れの多い要求仕様をもとにテスト設計を行わなければならないとしたらどうでしょう．要求の検討漏れは，そのままテストの漏れにつながります．
ソフトウェア開発者にとってさらに怖いのは，テスト担当者のほうが品質についての知見があり，また，要求分析能力がある場合です．テスト担当者は独自の要求分析を行い，テスト設計を行うので，ソフトウェア開発者とテスト担当者がそれぞれ異なる分析結果を出してしまいます．こうなると欠陥情報は増大し，テスト担当者は欠陥情報の管理と対策の確認に，ソフトウェア開発者は欠陥の調査に多くの工数を割くことになり，実質的に開発作業が止まってしまいます．
ソフトウェア開発者とテスト担当者の間のコミュニケーションはもちろんのこと，要求元とも十分にコミュニケーションを取り，各自が誠意を持って作業を進めることがたいせつです（コラム「製品開発とコミュニケーション」を参照）．
