480Mbpsでデータを転送するUSB2.0のプリント基板設計 ――In-System Design社が示す設計ガイドライン
Column2 USB 2.0対応LSIの開発:ISD-300とISD-300A
ISD-300とISD-300AはUSB2.0準拠のストレージ向けチップです.これらの製品は筆者ら(In-System Design社)が開発し,NECによって製造されました.ISD-300は世界で初めてUSB2.0規格に準拠し,USB-IFの認定を受けた周辺機器向けチップです.USB-IFから「best eye pattern」賞も受けています.
ISD-300とISD-300Aの論理回路は,すべてVHDLで記述しました.アナログ回路と動作周波数480MHzのディジタル回路はNECが提供しましたが,それ以外は第三者からマクロ・セルやIPを購入するのではなく,すべて筆者らが独自に開発しました.ATA/ATAPIのブロックは,ISD-200というUSB1.1対応のストレージ向けLSIをベースにしましたが,USBの論理をはじめ,多くの部分は40倍のデータ転送速度に対応するために一から設計しました.
論理回路のシミュレーションには米国Mentor Graphics社の「ModelSim」を使用しました.また,筆者らはチップの置かれる環境(周辺モデル)を作成してシミュレーションにかけました.この検証環境にはホスト側のUSBやATA/ATAPIディスクなどのモデルも含みます.この検証環境を使って,かなりの量のテスト・ケースを作成し,動作を確認しました.すべてのテストを実行させるには,LinuxやSolarisを使用しているハイエンドのワークステーションを使って,合計40~45時間ほどかかります.
シミュレーションに加えて,FPGAによるプロトタイプも作りました.ISD-300の論理を米国Xilinx社のFPGAに落とし,米国Lucent Technologies社(現在Agere Systems社)製のUSB2.0テスト・チップに接続しました.このプロトタイプを利用し,USB-IFが提供する「USBCheck」やベルギーのPIMC(Professional Interactive Media Centre)社が販売している「Ch8ck」などのソフトウェアを使って,USB規格の対応を確認しました.そのプロトタイプは,筆者らの実験室で動作が確認され,ほかのUSB装置との相性の評価や何十台ものATA/ATAPIストレージ機器との相性の確認にも利用されました.また,客先の製品評価にも広く使われました.
検証が終わると,論理合成を行いました.米国Synopsys社の「Design Complier」を使ってNECのスタンダード・セル・ライブラリに合わせて合成し,ネットリストをNECに渡しました.
ISD-300の開発では,開始から最初のサンプル・チップを手に入れるまでに約8ヵ月かかりました.配置配線の簡単なミスを直すためにメタル階層を修正しただけで,それ以外は一発で正常に動きました.また,USB-IFの認定評価テストも通りました.