大容量ストレージを使いやすくするUSB 3.0 ――使い慣れたUSBの転送速度が5Gbpsに向上
● USB 3.0の時代がやってくる
本誌を読んでおられる読者諸氏の中には,仲間内で以下のような会話をしたことがあったり,または聞いたりしたことがあるかもしれません.「容量の大きなファイルをコピーするとき,USBメモリは遅いよね」,「アダルト・ビデオを3作もUSB 2.0外付けハード・ディスクにコピーしたら,えらく時間がかかったよ.やっぱり,e-SATAインターフェース付きディスクかなぁ.なんといっても3Gbps(USB 2.0の約6.25倍)だからね」.
インターネットの高速化,デジタル・カメラやデジタル・ビデオ・カメラの撮像画素数の飛躍的な増大に伴って,ここ数年,上記のような話題が出てくるようになりました.また,米国Apple社の「iPod」が音声データだけでなく動画や静止画のデータを個人のレベルで容易に外へ持ち出せるようになりました.こうした携帯端末はパソコンのコンパニオンとしてUSBを介して接続される,なくてはならない周辺機器になってきました.
2007年9月18日,米国カリフォルニア州San Franciscoで開催された「Intel Developer Forum San Francisco」にて,USB 3.0プロモータ・グループが次のように発表しました.
「一般に普及しているUSBコンピュータ・コネクション・テクノロジはUSB 3.0仕様の提案により拡張されます.Intel社,Hewlett-Packard社,Microsoft社,NEC,NXP Semiconductors社,Texas Instruments社の各社はUSB 3.0プロモータ・グループを組織し,現在の通信速度を約10倍も上回るSuperSpeed USBパーソナル・インターコネクトを創造することを目指します.
この技術は"Fast Sync-N-Go"(高速に転送して即座に動作開始)通信アプリケーションをターゲットとし,パソコンや民生機器,モバイル機器などにおいて,ディジタル・メディアとしてユビキタス(至る所に存在する)で必要不可欠で,かつ扱うファイル・サイズが25Gバイトへ増えていくような分野が対象となるでしょう」
そして,USB 3.0について,以下のような目標が示されました.
- (USB 2.0と比べて)10倍以上の性能向上
- Fast Sync-N-Go
- ユーザの待ち時間の短縮化
- 電力効率の向上
- デバイス・ポーリングの無効
- 動作時とアイドル時のよりいっそうの低電力化
- USB 2.0との下位互換
また,USB 3.0プロモータ・グループは以下のように呼びかけています.
「2007年9月にUSB 3.0プロモータ・グループが組織され,2007年11月に協賛企業を募集しました.200社以上の企業がUSB 3.0の協賛会社として賛同し,会員になりました.これらの協賛会社は仕様書の一部分の策定に不可欠な存在でした.協賛会社の仕様策定への関与はこれで終了します.
USB 3.0採用への関与は今始まりました.USB 3.0採用同意書に署名して会員になりましょう.そうすることにより,相互扶助のIPライセンスが提供されます.USB-IF(USB Implementers Forum)はコンプライアンス・テスト,ロゴ・ライセンス,マーケティング,プロモーションを管理します」
この発表は,仕様策定の完成とそれに付随するプロモータ・グループの責任の解除を宣言するものであり,これによりこれまでのUSB 2.0のようにUSB-IFが今後の舵取りを行うことを宣言するアナウンスです.同時に,Microsoft社がWindows Vistaと次期OSであるWindows 7で(おそらくApple社もMac OSで)核となるUSB 3.0仕様と新しいホスト・コントローラ・インターフェースである「xHCI」仕様をいかにサポートしていくのかを見守る必要があると思います.なおIntel社はIntel's xHCIの要求事項と仕様についての資料を提供しています.ただし,これを入手するにはIntel社と守秘義務契約を結ばなければならないので注意してください.