USB 3.0規格のFAQ(2) ―― SuperSpeed USBはいかにして高速伝送を実現しているのか?
SuperSpeed USB(USB 3.0)の物理層の規格について,FAQ(Frequently Asked Questions)形式で説明する技術解説の第2回である.本稿の読者対象は,パソコン周辺機器のエンド・ユーザではなく,組み込みシステムや半導体の開発エンジニアを想定している.SuperSpeed USBでは高速伝送を実現するために,デエンファシスとレシーバ・イコライザを利用している.また,EMI低減のため,スクランブル/デスクランブルとスペクトラム拡散クロックを利用している.今回は,これらの仕組みについて解説する.(編集部)
※ 本記事は2009年8月時点のUSB 3.0の仕様をもとに作成しています.改定などにより内容が変更される可能性があることをご了承ください.また,掲載された技術情報を利用して生じたトラブルについては,組み込みネット,著作権者,ならびにUSB-IFは責任を負いかねますので,ご了承ください.
Q.5Gbpsの信号を何m伝送できるのか?
A.現在は3mを想定している.
USB 3.0の物理層の仕様は,PCI Express Rev. 2.0に準拠した5Gbpsの物理層チップを利用することで達成できる妥当な性能,基板寸法,ケーブル長から規定されています(図1).一般的なガラス・エポキシ基板(FR4)の使用を前提とし,ホスト(メイン・ボード)側で最長30cmトレース,デバイス側で最長15cmトレースを想定しています.ケーブル長の規定はありませんが,2.5GHz伝送時にケーブルの最大挿入損失を7.5dBと想定して,3mとなっています.これらの損失を合算すると,2.5GHz伝送時に約19dBとなります.ホスト基板の30cmトレース長は,パソコンの前面近くにチップが配置され,後部に設けたレセプタクルまで基板によって伝送,という想定です.
5Gbps(200ps周期)伝送において,最速のパターンは200ps幅の'1'と200ps幅の'0'が繰り返されたクロック・パターンのときで,繰り返し周期は400ps,周波数は2.5GHzになります.2.5GHz伝送の仕様が規定されているのは,ここからきています(図2).
方形波を周波数領域で見ると,図3のように基本波と奇数高調波が合成された形になっていますが,その中でもっともエネルギが大きいのは基本波であるため,基本波周波数で伝送路特性を押さえます.なお,このときの伝送路には,AC結合用のキャパシタ,レセプタクルとプラグの勘合損失,クロストークなども含めています.これらの伝送路のモデルは,シミュレーション用のTouchstoneファイル(Sパラメータ)として,USB-IFのWebサイト上で会員に公開されています.