大容量ストレージを使いやすくするUSB 3.0 ――使い慣れたUSBの転送速度が5Gbpsに向上

石井 潤一郎

●1394との競争の中で普及・拡大したUSB 2.0

 USBは当初USB 1.0として公開され,USB 1.1を経てUSB 2.0が2000年に公開され,現在に至っています注1.USB 1.0で定義された通信速度(データ転送速度)はLow Speedの1.5MbpsとFull Speedの12Mbpsでした.Low Speedは1秒間に約0.1875Mバイトの,Full Speedは1秒間に約1.5Mバイトのデータ容量をシリアルに転送する能力を理論的に備えていました.現実には機器に組み込まれた際にオーバヘッドが生じるため,実データ転送速度(実効速度)は理論値より遅くなってしまいます.


注1;USB 2.0の歴史については,技術解説「パソコン周りのケーブル追放を目指すCertifed Wireless USBの動向――USBはWireless USBに置き換わるか?」のColumn 2で詳しく紹介している.

 それでも旧来のRS-232やIEEE 488などのデータ転送速度に比べると十分に速く,使用に耐えうる速度でした.Low Speedは低速デバイス,言い換えると転送される総データ量が少ないキーボードやマウスなどの接続に,Full Speedは転送される総データ量が比較的多いプリンタや外付け記憶デバイス(外付けハード・ディスク装置)などに採用されていました.

 1996年に正式に公開されたUSB 1.0はこのまま安泰に使用されていくシリアル・インターフェースであると思われていました.ところが1998年にIEEE 1394(ある時はiLINK,またある時はFireWireと呼ばれ,それぞれ異なるロゴ・マークを持ち,人々を混乱に陥れてしまった)が注目され始め,「USB 1.0よりも高速なパソコン用シリアル・インターフェースはIEEE 1394」と思われました.実際にIEEE 1394のプロモータが主催した当時の開発者向け会議では多数の企業が賛同し,参加していました.しかしこのインターフェースはロイヤリティの問題や複数の呼び名,異なる機器間の相互接続性の維持の難しさなどから,結局はDV(Digital Video)用インターフェースという位置づけで停滞してしまうことになります.それ以上の普及をみることはありませんでした.

 当時,IEEE 1394の通信速度(データ転送速度)は3種類が定義されており,それぞれ100S(100Mbps),200S(200Mbps),400S(400Mbps)でした.USB 1.0で定義される通信速度と比較すると,これらは圧倒的にUSB 1.0を凌駕しており,「Plug & Play」を取り入れていたためにその使い勝手もUSB 1.0と遜色はなく,「キーボードやプリンタなどはUSB 1.0,外付けハード・ディスク装置やディジタル・ビデオ・カメラはIEEE 1394」という構図が出来つつありました.

 この状況は,USB 2.0プロモータ・グループの活動によって大きく変わりました.それはUSB 1.0と下位互換を保ちながら,さらに高速な通信速度を持つシリアル・インターフェース「USB 2.0」を策定するという動きでした.そして,当時のUSB 2.0開発者向け会議において通信速度を480Mbpsであると発表し,USB 1.0 Full Speedの40倍高速ということを売りものに,市場に浸透していくことになりました.1999年の「iMacブーム」がUSB 1.0の普及に拍車をかけました.俗にいう「Intel陣営」と「Apple陣営」の両方でUSB 2.0インターフェースの標準搭載数が飛躍的に増えていきました.

組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日