メカトロ・システム機器の進化には分散処理が欠かせない ――ロボットに学ぶ分散処理の基本概念と課題
4.「分散処理」開発の現状
ロボットの分散処理をめぐって現在,いくつかの技術が開発されています.ここでは,これらの技術を,ソフトウェアとハードウェア,アーキテクチャの三つに大別して概説します.また,ロボットの具体例を挙げて,その作業目的に照らし合わせて,分散処理がいかに行われているかを紹介し,それらにおける問題点を指摘します.
● インターフェースの標準化や,部品化,階層化が進む
ソフトウェア技術の側面では,日本ロボット工業会の主導で,各ロボットの持つ情報をネットワークを介して通信し合うためのインターフェースの標準化が図られています.ロボットの代表的なメーカが参加して,機種やネットワークの違いを超えて,統一的なアクセスを可能にするネットワークOriN(オライン)(Open Resource interface for the Network / Open Robot interface for the Network)が開発されています.
また,産業技術総合研究所では,ヒューマノイド・ソフトウェア開発プラットホーム OpenHRP(Open Architecture Humanoid Robotics Platform)を,CORBA(コルパ)(common object request broaker architecture)という分散オブジェクト技術を使って構築しています.
一方,ソニーは,AIBO注2開発に伴ってエンターテインメント・ロボット用開発環境 OPEN-Rを策定し,ハードウェアとソフトウェアの部品化,また構成に関する階層化を提案しています.
東芝の研究開発センターも,Javaベースの分散オブジェクト技術 HORBを利用して,オープン・ロボット・コントローラ・アーキテクチャ(ORCA)を開発しています(3).また,関連技術として,ネットワーク上のマルチメディアの通信品質を最適化するために提案されているQoS(quality of service)の考えかたと技術も注目すべきではないかと思います.
注2;2006年1月26日,ソニーは2005年度末にAIBOの生産を終え,QRIOの新規開発も中止すると発表.ただし,AIBOとQRIOで培ったAIの研究開発は継続するという.