メカトロ・システム機器の進化には分散処理が欠かせない ――ロボットに学ぶ分散処理の基本概念と課題
2.メカトロニクスとロボティクスは何が違うのか
電子工学(electronics)と機械工学(mechanics)を結合し,機械を動かして制御する工学技術は,総称してメカトロニクス(mechatronics)と呼ばれています.これは機械システムにおけるエネルギー効率の改善や,機能の多様性・柔軟性の達成,さらにはマイクロコンピュータを取り入れることによって機械に知能を実現させることにつながることから,今日の飛行機,自動車,工作機械,ロボットなど,さまざまな機器に広く展開されるようになってきています.本誌でも2004年5月号で「『メカトロ機器開発』で身を立てる!」という特集でこのテーマが取りあげられました.
メカトロニクスの発展によって,今日ではすでに自動車とロボットの要素技術は区別できない状況になってきています.最近の高級車には,ECU(electronic control unit)といった電子制御ユニットが何十個も搭載されるようになりました.その分散処理技術に着目すれば,CAN(controller area network)やLIN(local interconnect network),FlexRay,TTx,MOST(media oriented system transport),D2B(digital domestic bus)などの通信プロトコルが規格化され,車載ネットワークを形成してECUの分散処理を行っています.また,目的や用途,コストによって,1台の車に2系統以上のネットワークを使っている例も少なくありません.その詳細な技術紹介については,本誌の2005年5月号の特集2「ザ・新人研修!組み込みシステム開発編」および参考文献(3)を参照していただければと思います.