メカトロ・システム機器の進化には分散処理が欠かせない ――ロボットに学ぶ分散処理の基本概念と課題
工場などの生産現場で汎用機械として産業用ロボットが登場したのは1960年代のことでしたが,その後の技術革新によって,ロボットの高速化,高精度化は驚くほど高いレベルに達しました.また,ロボットの作業も簡単な部品の運搬から,溶接,塗装,組み立てなどに至るまで,多岐にわたって実現されるようになりました.日本は1980年をロボット元年と称し,そのころから産業用ロボットの生産および保有台数で世界一を誇ってきました.さらに近年では,ヒューマノイドと呼ばれる人間型のロボットや,犬,蛇など,さまざまな形態を模倣した動物型ロボットが続々と発表されています.これによって,産業用にとどまらず,医療,福祉,介護,教育,娯楽,災害救助など,さまざまな分野においてロボットへの期待が広がっています(図2).
昨今の新聞やテレビ,閉幕した愛知万博などを見ると,さまざまな最先端のロボットが開発されていることがわかります.歩くのはもちろんのこと,走ったり,倒れた状態から起き上がったり,また,人間と会話したり,握手したりと,部分的に見ればかなり高度なことがいとも簡単にできているようにみえます.費用さえ考えなければ,今すぐにでもわが家でロボットが活用できるのではないかと,錯覚しそうになります.
しかし,実際はどうでしょうか.それはまだ先のことではないかと思います.ロボット技術は,電気・電子技術,センサ・アクチュエータ技術,システム・制御技術,計算機・情報技術,機械・製造技術など,ハードウェアとソフトウェアの両面を集積して総合的に形成されるものです.その動作環境や作業内容の違いによって,技術的な難易度はかなり違ってきます.