メカトロ・システム機器の進化には分散処理が欠かせない ――ロボットに学ぶ分散処理の基本概念と課題

羅 志偉,平野慎也

tag: 組み込み

技術解説 2006年5月11日

6.今後の展開

 これからのロボットの研究開発にとっては,構造から機能まで,生物の分散処理のしくみを学ぶことが重要です.生物は,中枢となる脳神経系による高度な分散処理によって,今までのどのロボットよりも複雑な環境において柔軟に運動します.

 脳神経系は,ノイマン型計算アーキテクチャとは根本的に異なります.感覚系による環境認知だけでなく,高次な記憶や論理思考,場合によっては情動までに依存した意思決定や動作を計画します.体温や血圧,血糖など身体の内部状態を維持管理しつつ,環境に積極的に働きかけて高度な身体運動制御機能を備えます.また,量的にも種類的にも数多くのセンサを駆使して,環境との力学的な相互作用を通して実時間における環境変化に適応し,運動の学習,熟練が達成されます.

 現在の脳科学研究では,脳神経系による高度な運動制御機能は,機能が局在した大脳皮質,大脳基底核,小脳,そして脊髄反射系などのモジュール化,階層化,複合化で達成されていると解釈されています.また,生物に多く見られるさまざまな周期運動は,脊髄レベルにおけるCPG(central pattern generator)による分散処理で実現されていると示唆されています.冗長な運動自由度を同調させる非線形振動の引き込み原理がその本質を果たしています.

 生物の分散処理を学んだ具体的な技術開発として,皮膚触覚を模擬したソフトな人工皮膚や,自己組織化アルゴリズム,分子生物学原理からのヒントで考案された並列処理による最適化を行う遺伝的アルゴリズムなどが挙げられます.

 現状,微小電極や脳のイメージングなどの計測技術によって個別の神経細胞の電気的活動や脳の機能局在が解明されつつありますが,脳神経系による時空間情報のコーディング,脳内における情報の構造化,モデル化,情報の分析・統合,環境との相互作用で生じた制御機能の発達など,脳の高次認知制御機能については,いまだに仮説・検証のレベルにあり,その本質となる基本原理はほとんど明らかにされていません.これらの基本原理の解明は,これからのロボットの分散処理研究に対して大きなインパクトを与えるでしょう.

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