アーキテクチャの視点でみたARMコアの変遷と動向 ――LSI設計者は「ファミリ」に,ソフト開発者は「アーキテクチャ」に注目
● ファミリごとの特徴を理解する
以下に,ARM7以降のファミリの変遷をまとめます.
1) ARM7ファミリ
ARM7TDMIを中心とするファミリです.論理合成可能バージョンのARM7TDMI-Sもあり,ユニファイド・キャッシュ(命令キャッシュとデータ・キャッシュを単一にしたもの)を搭載したARM720Tもあります.携帯電話のベースバンド処理向けでブレークしました.軽くて使いやすいコアであるため,それほど絶対性能を必要としない組み込み機器に最適で,幅広い用途に数多く使用され,現在も現役であり続けています.一部の例外を除き,3段パイプラインのコアで,最先端のプロセスで製造しても,動作クロックはまず100MHzには届きません.
2) ARM8ファミリ
ARM社の製品にはARM8を冠したコアは,現在ラインナップされていません.旧DEC(Digital Equipment Corp.)のStrongARMがARM8に該当します.DECの半導体部門は米国Intel社に買収されたため,同社のXScaleがARM 8の末裔と言えなくもありません.Intel社のARMは独自の進化を遂げていますが,アーキテクチャ的にはARM社のものと整合性をとるように配慮されています.