アーキテクチャの視点でみたARMコアの変遷と動向 ――LSI設計者は「ファミリ」に,ソフト開発者は「アーキテクチャ」に注目
● アーキテクチャごとの特徴を理解する
最近のアーキテクチャについて,簡単に説明します.
1) V4Tアーキテクチャ
ARMの代表品種であるARM7TDMIやARM9の第1世代であるARM920などがこれにあたります.ARM命令に加えて,16ビット固定長のThumb命令をサポートしています.これは,現行のARMのほぼすべての製品の基本となるアーキテクチャです.ほとんどのARM7系がこのアーキテクチャであり,何十億個かわかりませんが,現在までに非常に大量のチップが出荷されているものと思われます.
2) V5TEアーキテクチャ
V4TにMAC演算や飽和(saturation)演算に対応したDSP拡張を追加した,V5の基本となるアーキテクチャです.ARM9ファミリのARM946E-SやARM10ファミリのARM1020Eがこれに相当します.このアーキテクチャを採用した製品は,V4Tベースを上回るほどには多くないと推定されます.しかし今後,ARM9系の組み込み向けコアであるARM966/968などの採用とともに,出荷数が増えると思われます.
3) V5TEJアーキテクチャ
V5TEJは,V5TEにARM社のJavaバイト・マシンの実行支援機能であるJazelleを追加したものです.Jazelleでは,一部のバイト・コードをハードウェアで,複雑なものはソフトウェアで処理してJavaの実行効率を上げます.ARM9ファミリを代表する人気品種のARM926EJ-SなどがV5TEJを採用しています.V5TEの派生アーキテクチャですが,携帯電話のアプリケーション・プロセッサとして定番になっているので,ここでは独立して取り上げました.ARM7EJ-Sという型名のARM7ファミリ品も発表されていますが,じつはこれはARM7系コアではなく,ARM9系コアのカットダウンではないかと思われます.