アーキテクチャの視点でみたARMコアの変遷と動向 ――LSI設計者は「ファミリ」に,ソフト開発者は「アーキテクチャ」に注目
● 内蔵機能を型名から推定できる
ARMプロセッサの構成は,キャッシュの有無やMMU(memory management unit)の有無でも分類することができます.こちらは図5に概要を示します.ARM社特有の事情ですが,キャッシュ,MMU付きは10の位が「2」,MMUなしでキャッシュ付きは10の位が「4」,キャッシュ,MMUともなしは10の位が「6」などとなっています.型名の10の位については,数字の小さいもののほうが上位になっているので注意してください.
一般論で言えば,種々のアプリケーション・ソフトウェアを走らせる必要のあるOS(例えばLinuxなど)を搭載するのであれば,MMUが必須になることが多いようですが,実メモリだけ(MMUなし)で動作することを特徴としているOS実装もあり,一概には言えません.また,高速動作をねらうのであればキャッシュを搭載することが一般的ですが,キャッシュ・ミスによってリアルタイム性を厳しく制御することが難しくなるケースもあります.そのため,高速性と厳しいリアルタイム性が要求されるケースでは,あえてキャッシュを積まず,キャッシュレスの高速なメイン・メモリのみで構成したほうがよいこともあります.
図5 キャッシュ,MMU,FPUの有無とファミリ内の製品
同じファミリでも,キャッシュ,MMU,FPU(浮動小数点演算ユニット)との組み合わせにより多様なコアがある.