アーキテクチャの視点でみたARMコアの変遷と動向 ――LSI設計者は「ファミリ」に,ソフト開発者は「アーキテクチャ」に注目
4) V6アーキテクチャ
V5TEJに前述のメディア拡張機能を追加したものがV6アーキテクチャです.これは,32ビット幅を16ビット・オペランド×2個,もしくは8ビット・オペランド×4個とみなすSIMD拡張です.ARM11ファミリに適用されました.じつはこのV6の段階でThumb2命令セットも登場しているのですが,この時点ではあくまでもオプション機能の扱いでした.V6の段階では,従来のARM命令セット+Thumb命令セットの混在使用が主流となっています.
5) V7アーキテクチャ
V7は,Cortexファミリで登場した新世代のアーキテクチャです.Thumb2命令の採用がV7アーキテクチャの共通部分です.Thumb2の採用により,従来わずらわしかったARM命令とThumb命令をコンテキストで切り替える手法と決別できました.ただし,V7対応であるCortexファミリの中でも,従来のARM(Thumb)命令セットの使用も可能でアーキテクチャ面の継承性の高いハイエンドのCortex-Aと,おそらく軽量化のためにThumb2に絞ってしまい,従来とは断絶のあるCortex-Mでは,ほとんど別のアーキテクチャと言うべきではないかと思います(ARM社はV7A,V7Mと呼んでいるが,その差は大きい).
また,Cortex-A系では,NEONという名で128ビット幅のSIMD命令をサポートするようになり,演算能力は格段に進歩しています(ARM11ではSIMDといいながら,32ビット幅にとどまっていた).