0.4mm角RFIDチップ「ミューチップ」の設計技術 ――回路,アンテナ,実装,セキュリティ技術を組み合わせる
3 ミューチップの電気的特性
本RFIDチップの整流回路や電圧リミッタなどの電気的特性について説明する.本RFIDチップの最小動作電圧は0.5Vである.このチップは,前述のようにACFによって外付けアンテナに接続される.トランスポンダ(RFIDチップ+アンテナ)の厚さは0.15mmである.また,出力が300mWの読み取り装置を利用した場合の通信距離は300mmである.
●整流回路は低電圧動作のCMOSで構成
図6に整流回路の特性を示す.入力電力はアンテナに入力されるマイクロ波帯のキャリア周波数における電磁波エネルギを示している.また,縦軸は実負荷における出力電圧を示している.
入力電力は,読み取り装置とRFIDチップの通信距離で決まる.遠距離でも,ディジタル回路の最小動作電圧(0.5V)を発生するだけの入力電力が必要になる.一方,読み取り装置とRFIDチップの通信距離が近づいたとき,放射エネルギを主体とした入力電力は通信距離の逆数に比例して大きくなり,それに伴って内部電圧も高くなっていく.
電池なしで動作する素子では,空間の電磁波エネルギを変換する整流回路の特性がたいへん重要である.本RFIDチップの整流回路はすべてCMOSトランジスタとダイオードで構成されており,CMOS回路で必要な0.5V以上の動作電圧を容易に得ることができる.
整流回路特性は回路,および回路を構成する素子の特性に依存する.ダイオードを使用する回路であれば,そのダイオードの順方向降下電圧値が特性を確保するうえでたいへん重要である.CMOS回路の微細化に伴い,小さな面積でも良好なダイオード特性を得ることができるので,今後,整流特性はCMOS回路の微細化とともに改善されていくことになろう.
〔図6〕整流回路の特性
電池なしで動作する素子では,空間の電磁波エネルギを直流電圧に変換する整流回路の特性がたいへん重要である.本RFIDチップの整流回路はすべてCMOS回路で構成されている.CMOS回路が必要とする0.5V以上の電圧を容易に得ることができる.
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