つながるワイヤレス通信機器の開発手法(2) ――製品機能を決める

太田博之

tag: 組み込み

技術解説 2002年10月11日

●外資系企業のマーケティング力に見習うべきこと

 通常,通信機器の開発には1年近くかかる.開発スタートの時期に1年後の製品の機能を決定する作業が必要になる.このときに力を発揮するのが「マーケティング力」である.

 筆者は大企業の電子機器メーカやスタートアップ企業,外資系企業の開発部門を経験してきたが,外資系企業のマーケティング力には目を見はるものがあった.

 日本では,まったく新規の製品を開発する場合,技術系の人間がこれまでの経験則で決めたり,数枚の表を作っただけで決めてしまうことが多い.表を作るにしても,各項目を「○」,「×」,「△」で埋める程度のものである.つまり,「走り出してから考えよう」というケースが多いようだ.

 筆者が在籍した外資系企業のマーケティングの場合,作成する表は10枚を超え,各項目にかなり具体的な数字が並ぶ.その数字をもとにもっともよい組み合わせを探し出す.

 筆者はこれを見て,「マーケティングはエンジニアリングの一部だ」と感じた.日本では早く開発に取りかからないと後工程が心配だと思うようだ.しかし,米国では「綿密なマーケティングが売れる製品を生み出す」という自信のもとに製品開発のスケジュールを決めているようだ.筆者が体験したプロジェクトでは,マーケティングに1ヵ月の時間を割いていた.

 もちろんマーケティングの結果に対してエンジニア・チームは実現可能性の検討を行う.その検討結果をもとにマーケティング担当者と設計者が意見交換を行うプロセスもこの1ヵ月には含まれる.

 製品の機能を決める要素は非常に多岐にわたり,とても一度だけでは説明することは困難である.今回そのエッセンスだけを紹介してみた.次回以降も消費電流,低コスト化について随時説明していく予定である.


おおた・ひろゆき
加賀電子(株)

◆筆者プロフィール◆
太田博之.20年近くにわたりGPS,携帯電話,ワイヤレスLAN,Bluetooth用システムおよびシステムLSI開発を経験.現在はBluetooth開発アライアンスhimicoプロジェクト(http://www.himico.com/)にコーディネータとして参加.システムLSI開発から次のフェーズへのステップアップを模索中.趣味は,あまたある標準通信規格をだれよりも早く理解すること.

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