つながるワイヤレス通信機器の開発手法(2) ――製品機能を決める

太田博之

tag: 組み込み

技術解説 2002年10月11日

 設計者はつねに最高の機能品質を目ざしながら,同時にコストを最小限にとどめなければならない.製造原価を下げるためには,部品コストと製造コストを抑える必要がある.部品コストの低減は,

  • 安い部品を使用する
  • 部品点数を減らす

ことなどで実現する.製造コストは作りやすい設計を行うことで実現する.また,自社または自社を含むいくつかの会社で共同開発した場合,部品コストの中にその開発コストが含まれることがある.これらの要素はほとんど,設計段階で作り込まれるといえる.

 製造コストと開発コストは,プロジェクトや製品の性格によって大きく異なってくる.しかし,調達する部品については,決定方法にいくつかの目安があることを知っておいてもらいたい.

  1. 性能の低い部品の採用
  2. 生産量の多い部品の採用
  3. 枯れた部品の採用

 この3点は普遍的な目安だと思う.同じ機能であれば性能の低いほうが,当然,部品代が安くなる.性能の低い部品を組み合わせて高い機能を実現することが,設計者の腕の見せどころであるといえよう.

 また,生産量の多い部品を採用することも重要である.例えば,フラッシュ・メモリやSRAMはその容量,速度,パッケージの形態など,実にさまざまなものがある.どれを選定するかいつも迷う.生産量が多い部品を探す方法として,どの製品にその部品が使われているかを考えてみるのもよい.例えば,携帯電話の場合,フラッシュ・メモリとSRAMの両方を使用している.もし,現在開発中の製品に携帯電話用のフラッシュ・メモリとSRAMを使うことができれば,たとえ1万台しか生産しない機器であっても,携帯電話数千万台分の生産量がある部品として,安く手に入れることができる.

 生産量が多いか,機器にどのような仕様の部品が使われているかをいつも観察しておくと,実際に部品選定を行う際に役立つことを覚えておいてほしい.生産量の多い機器としては携帯電話,パソコン,ディジタル・カメラ,MDプレーヤなどがある.

 次に「枯れた部品」について説明する.  新しい部品を作るには必ず開発費や製造ラインの設備投資が必要になる.また,前述のとおり,新製品ということで販売コストも大きくなる.これらのコストを回収するため,世の中に出たばかりの部品は高価なものになる.しかし,月日がたち,累積の販売量が増えて初期の開発費などのコストを回収した後は,部品の値段はだんだん下がってくるものである.このような「枯れた部品」を組み合わせて部品コストを抑えることも,設計者の腕の見せどころである.

 コストのことを考えると,製品開発のために難しいアルゴリズムや製品知識を勉強する以外にも,設計者が行うべきことはたくさんある.そういう意味では,新聞の新製品紹介欄や『日経トレンディ』,『DIME』などの雑誌は,部品コストの相場を把握するためのよい材料であるといえる.

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