SiPモジュールとは何か? ――「選択肢の一つ」から「必要不可欠な技術」へ

海野雅史

tag: 組み込み

技術解説 2002年10月 1日

●SiP vs. ボード実装

 次に,SiPとボード(プリント基板)実装の違いを考えてみましょう.

1)ボード上の高速バスの設計が不要に

 システム全体の高速化・高性能化を図るためには,LSI間の信号遅延時間を小さくすることが必須です.しかし,複数のパッケージを実装するボードの上では,信号がパッケージとプリント基板を介して伝播します.このため,配線長は長くなり,寄生インダクタンスや寄生容量の影響で配線負荷が増え,信号遅延時間が大きくなります.また,配線密度が上がらず,バス幅を広げにくいという問題もあります.

 SiPの場合,インターポーザ(パッケージ内部の薄い基板)の中を最短距離で接続するため,配線長は短くなります.高速信号の配線をSiPの内部に置けば,プリント基板上の高速バスなどの設計が不要となります.つまり,ボード設計者の負担を減らすことができます(SiPを開発する側では高速バスへの配慮が必要になる).

2)クロストーク対策やノイズ対策が軽減される

 ボードに実装される部品が増えると,配線の引き回しが困難になり,クロストークなどの問題が深刻になってきます.SiPでは,各ダイ・チップを単一のパッケージに組み込み,配線設計の最適化を行っているため,クロストークの問題は減ります.

3)顧客のシステム基板コストが下がる

 近年の微細化・高性能化に伴って,チップの小型化や多ピン化,ピン・ピッチの微細化が進んでいます.また,部品点数の増加も著しく,結果として,基板面積の増大や基板接続数の増加,基板層数の増加などにより基板コストが増大しています.

 SiPを使用する場合,基板面積や基板接続数,基板層数を低減できます.ボール・ピッチは1.27mmまたは0.8mmに対応できます.微細なピッチのLSIを基板に実装する場合,海外生産が難しいため,新たな生産拠点の確保や設備投資などが必要となります.しかし,SiPを利用することで現有設備に合わせたボール・ピッチが使えます.このため基板の製造費用の高騰を抑えることができます.

 実際にシステムを開発する際には,こうしたSiP,SOC,ボード実装の利害得失,および各手法における開発コストや製造コスト,生産数量などのトレードオフを検討して,採用する技術を選択しなければなりません.

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