SiPモジュールとは何か? ――「選択肢の一つ」から「必要不可欠な技術」へ
●熱やノイズのトラブルを回避する技術
次に,SiPの開発では不可欠な熱解析とノイズ解析の問題について説明します.
1)パッケージの熱解析
スタック型SiPでは,チップを積層するために,それぞれのチップの発熱を考慮する必要があります.これは,各チップの合わせた発熱量がSiPの動作温度範囲を決めるカギとなるからです.
例えば,高温になるとSDRAMでは,リフレッシュ特性が劣化します.また,フラッシュ・メモリでは,データ・リテンションなどの問題が生じます.SRAMでは,スタンバイ時のリーク電流が増加するため,電源などの2次電池の消耗が早くなります.そのためスタック型SiPでは,「部品単体」,「基板単体」,「筐体」の各階層について,空気の流れと熱伝達を考慮した設計を行う必要があります.
パッケージの熱抵抗の評価は,米国JEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)標準の環境(大きな箱内の自然対流,風洞内の強制対流)で行っています.また,熱抵抗値は,環境依存性の高い数値です.電子機器内は,熱的にほとんど密封されているため,JEDEC標準環境より大きな値となりやすく,実測値と異なる場合があります.
筆者らは,非構造格子を用いた熱流体解析を用い,長年培ってきたモデリング技術を駆使して,基板サイズや筐体サイズ,基板上のほかの熱源を考慮した実動作に近い熱抵抗評価を行っています.図7にスタック型SiPの解析モデルを,図8に温度分布解析を行った結果の一例を示します.このようなシミュレーションを行い,スタック型SiPの動作温度の範囲を決めていきます.
〔図7〕解析モデルの外観
ディジタル・ビデオ・カメラを想定したシステム基板にSiPを搭載した熱モデルの概要である.
〔図8〕熱シミュレーションによる温度分布
ディジタル・ビデオ・カメラ用SiPを例に,熱解析を行った.CPUを中心に発熱し,SiP内で熱が閉じ込められているようすがわかる.SiPのパッケージが小さいため,熱飽和が生じている.このため熱伝達を考慮した設計が必要である.