Cベース設計教育の カリキュラム構築から運用まで
Column 教える悩み
トレーナも人間です.たまにはぐちをこぼしたくなることもあります.
研修後のアンケートの回答を読んでいるとがく然とさせられることがあります.「トレーナからのアドバイスは不親切だ.なぜ最初から具体的に修正方法を教えてくれなかったのか」というようなコメントです.思わず,「あんたのためや!」と,突っ込みを入れたくなります.
「添削」ということばが悪かったのかもしれません.一般には,「赤ペン先生」に代表されるように,生徒からの回答に対してまちがいを指摘し,正解とアドバイスを赤文字で記入して返送する,というイメージを抱きがちです.本教育カリキュラムでは,受講生みずから考えてもらい,問題解決に取り組んでもらうことを主眼に置いています.トレーナから具体的な修正場所や修正方法を教えるようなことはまずありません.
別件では,研修の最後の演習(回路仕様を問題として与え,C言語によるビヘイビア記述の作成→C検証→ビヘイビア合成→RTL検証)に関して,「こんな簡単な回路ならVerilog HDLで書いたほうが容易に記述できる.ビヘイビア・レベル設計の利点がさっぱり理解できない」とのこと(そんなんわかっとるわい!).「入門コース」という立場上,RTL記述の難しさが際立つような複雑な回路を演習として出題するわけにはいきません.ほとんどの受講生がそれほど苦労することなく実施できるレベルの課題にせざるをえないのです.スムーズなビヘイビア合成フローを体験してもらい,Cベース設計に強い興味を持ってもらうことを期待しているからです.
意図したとおりに受講生にとらえてもらえないことへの「もどかしさ」と焦燥感を胸に,日々,トレーナは添削や質問への回答に明け暮れています.