VHDLのCD-ROM教材を開発,「設計スタイルガイド」をもとに推奨記述を絞り込む

組み込みネット編集部

tag: 半導体

インタビュー 2001年8月 7日

 『半導体や電子機器の製品サイクルは,年を追うごとに短くなってきている.ベテラン技術者は目の前の仕事に追われ,若手の育成がおざなりになりがちだ.一方,大学のエンジニアリング教育は徐々に実務指向になってきてはいるものの,まだ,企業のニーズを十分に満たしているとは言いにくい.その結果,若手技術者を中心に設計技術力の空洞化が広がっている』.

 time-to-market(製品を市場に投入するまでの期間)という言葉が,半導体や電子機器の市場動向を左右するキーワードになって以来,このような構図が開発現場の間で広がっているようだ.

 こうした状況を背景として,ベテラン技術者が若手を指導する際の負担を軽減するため,電機メーカのなかには,技術者の基礎教育の一部を外部のコンサルタントや教育サービス事業者などにまかせる例が出てきている.また,技術教育の形態としては,OJT(on the job training)や講義形式の座学のほか,CD-ROMやインターネットを利用した教材を使って自習する方法もある.ここでは,HDL(ハードウェア記述言語)コンサルタント会社であるエッチ・ディー・ラボの小林優氏(写真1)に話を聞いた.同氏は,HDL教育用CD-ROM教材「HDL Endeavor(写真2)」の開発を担当している.

p1.jpg
〔写真1〕エッチ・ディー・ラボ 取締役 設計コンサルタントの小林優氏

――HDL教育用CD-ROM教材の出荷本数は?

小林氏 2年前に発売したHDL Endeavor Verilog HDLの出荷本数は約900本.また,今回,HDL Endeavor VHDLの出荷も開始した.先月(2001年7月)から,主にインターネット上で販売している.価格はVerilog HDL版と同じで99,800円.すでに100本以上出荷した.VHDL版はVerilog HDL版より教材としての完成度が高いと自負している.

――VHDL版とVerilog HDL版の履修内容に違いはあるのか.

小林氏 単元数は39単元.Verilog HDL版と比べて1単元増えただけで,履修内容はほとんど変わらない.Verilog HDL版と同じように,シミュレーションや論理合成を体験する疑似ツールが入っている.今回新しく追加した内容として,「ワークページ」という項目を随所に入れた.10行程度の記述を実際に画面上に書き込んでもらい,結果を自分で答え合わせするだけの作業だが,単に画面をながめるのではなく,実際に手を動かしてもらうことが大事だと考えた.

――VHDLならではのむずかしさはあったか?

小林氏 たいへんだった.VHDLは文法的に記述できる範囲が広い.なんでも書けてしまう.足りないところや抜けがない.ドキュメントを作成するための言語としてはよいが,回路を記述するための言語としては,仕様が豊富すぎると感じた.たとえば,パッケージやデータ型の問題をどううまく説明するのかが問題になる.これだけでも,まともに説明すると,膨大なページ数になる.既存のVHDLの教科書を見ていると,「あれもできる,これもできる」と言っているものが多く,「これを使え」と言っているものは少ない.これでは読む側がたいへんだ.今回のHDL Endeavor VHDLでは,エッチ・ディー・ラボと半導体理工学研究センター(STARC)がまとめた「設計スタイルガイド」をもとに,「これを使え」という箇所を言い切った.そのぶん,履修内容がわりあい簡潔になった.理解もすっきりする.それ以外の記述スタイルについては,選択単元(受講者が必要に応じて選択する単元)のところで説明することで,フォローした.

――今後のHDL教材の開発予定は?

小林氏 現在,「ワークブック」の製品化を検討している.これは,HDL Endeavorの講義内容の元になった原稿を,シーン別に並べたもの.いわゆる講義ノートだ.多くの会社では,HDL Endeavorを購入した後,社内の技術者に貸し出し方式で利用させている.1人の技術者が1本のソフトを占有できない.そこで,紙の形態の教材を用意してほしいという要望があった.現在,見本を作成したところ.大量購入のユーザが出てくれば,対応していきたい.

――インターネットを利用した講義の配信などは検討しているか?

小林氏 HDL Endeavorのオンライン・デモは,すでにインターネット上で公開している.CD-ROM版そのままのデータでは重いので,壁紙などのデータを取り除き,音声品質を落としている.それでも1ページが500kバイトくらいになる.企業の技術者は,CD-ROM教材を自宅に持ち帰って勉強する場合があるが,Webベースの教材を自宅のISDN回線(64kbps)で利用するのは,速度面の問題があってまだむずかしい.10Mbpsの回線が利用できるようになれば,Webを利用した配信も可能になる.これはそれほど遠くない話.YahooやSonetが8Mbpsのサービスを始めようとしているからだ.

p2.jpg
〔写真2〕HDL Endeavor VHDL


・エッチ・ディー・ラボのホームページ
http://www.hdlab.co.jp/

組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日