組み込みシステム制約とそれに対するアプローチ ―― 模型ロケットに観測システムを組み込んだ「Hamana-5」プロジェクトに学ぶ

松本 哲明

tag: 組み込み 電子回路

技術解説 2009年5月 1日

●重量オーバ

 Hamana-5の最終打ち上げに「R2D2」が持参したペイロードは,バッテリを含めた重量が130gと,レギュレーションの80gを大幅にオーバしていました(写真10)


[写真10] ペイロード重量測定

 

 重量オーバの最大の原因は,使用したバッテリにあります.このチームは,バッテリとして角型の9Vバッテリ(6LR6P)を使用していました.このバッテリの重量だけで43gもあり,ペイロードの規定最大重量の5割以上を占めてしまいます.

 バッテリを除いても87gと,かなりのダイエットが必要な状態でした.電子部品の乗った基板だけに,ヤスリで削って軽くするわけにも行かず,その場での対策は不可能でした注4.

注4:幸いにも実行委員会が用意した模型ロケットが軽量だったので,この重量のペイロードを搭載しても安全上の問題は発生しませんでした(「モデルロケット安全コード」に準拠した打ち上げを実施できる).このため,Hamana-5実行委員会が特別に許可して,同チームも無事に打ち上げを行うことができました.

 重量については後からではどうにもならないため,ハードウェアの選定段階から各部品の重量を考慮するしかありません.ペイロードを作成するうえで,特に重い部品はバッテリとユニバーサル基板です.ユニバーサル基板は極力小さくすることと,使用していないランドとスルーホールを取り除くことで軽くすることができます.

 また,気をつけなければいけないのがはんだ付けです.普通,皆さんが使っているはんだには鉛が入っているので,はんだをたくさん使うとかなりの重量になります.耐衝撃性を上げるためになるべく多くのはんだで部品を付けたいと思うでしょうが,重量増になるうえ,過度のはんだは衝撃を受けたときに重量がランドにかかり,ランドが剥離する原因にもなりますから,はんだの量は適切な量にとどめなければなりません.

●バッテリはLiPoがお勧め

 バッテリについてですが,数年前までは,小さくて容量の大きなバッテリは入手が困難でした.しかし今では,模型に使われているリチウム・ポリマ・バッテリ(LiPo)で小さいものが入手しやすくなっているのでお勧めです(写真11).3.7V 90mAhのもので,リード線を含めても重量2.8gという優れものです.充電式なので,打ち上げ前に充電しておけば残容量を気にする必要はありませんし,NiCdやNiMHのようにメモリ効果もないので,充電前に放電する手間も不要です.


[写真11] リチウム・ポリマ・バッテリ

 電源は,3.3V単電源であれば,DC/DCコンバータを使うのがよいでしょう.単セルで2.7~4.2V程度の出力電圧なので,この電圧を昇降圧して3.3Vを生成します.専用ICといくつかの抵抗,コイル,コンデンサで作成できるので,3端子レギュレータよりは大きくなりますが,2セルにして3端子レギュレータで3.3Vを生成するよりは軽くできるはずです.

 5Vと3.3Vを生成する場合は,バッテリを2セルにして,5.4~8.4Vから3端子レギュレータを使って生成するか,単セルからDC/DCコンバータで5Vを生成し,5Vから3端子レギュレータで3.3Vを生成するという方法もあります.どの方法を使うかは,必要とされる電力から,実装面積,重量,エネルギ損失量を検討して決定することになります.

 なお,リチウム・ポリマ・バッテリはリチウム・イオン・バッテリと同様に,エネルギ密度が高く,使用方法を誤ると重大な事故を起こす可能性があります.バッテリ・メーカや販売元が提供する注意事項をよく守って使用してください.

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