組み込み分野における「マルチプロセッサ」とは ―― 多機能・低消費電力の要求にこたえるための技術的要素と課題
●ボトルネックを防ぐバス技術の進化
マルチプロセッサでは,プロセッサ間の通信,共通リソースへのアクセスにおいて,複数プロセッサからのバス・アクセス要求が競合する可能性があり,一般に単一プロセッサよりもバスに高い性能が要求されます(キャッシュを持ったプロセッサでは,単一プロセッサよりもキャッシュのリプレイスを低減できるという考えかたもある).
バスの性能に対する要求は,ホモジニアスかヘテロジニアスか,対称か非対称かによって異なります.一般に,ホモジニアスな対称マルチプロセッサでは高いバス性能を要求されます.
現在,さまざまな高速バスが提案されていますが,代表的な高性能オンチップ・バスとして,英国ARM社のAXI(Advanced eXtensible Interface)と,オープン規格のOCP(Open Core Protocol)が挙げられます.
●開発を効率化するデバッグ技術の普及
現在のプロセッサの多くは,JTAGをベースとしたデバッグ・ポートをチップ上に有しています.これによって,処理の実行・停止といった制御や処理内容のトレース機能を実現できます.また,これらのデバッグ・ポートを利用したさまざまな製品(デバッガなど)が販売されています.
JTAGを利用すると,複数のデバイスを一つのデバッグ・ポートにシリアルに接続できます.こうした特徴を利用して,マルチプロセッサ対応のデバッガ(マルチプロセッサであっても一つのデバッガに接続できる)をいくつかのベンダが開発しています.