組み込み分野における「マルチプロセッサ」とは ―― 多機能・低消費電力の要求にこたえるための技術的要素と課題
● 組み込み向けマルチプロセッサはヘテロで非対称な構成
近年,組み込み機器向けプロセッサの分野でも,マルチプロセッサが脚光を浴びています.
そもそも製品としての組み込みシステムは,単一の処理ではなく,さまざまな処理が分散・協調しながら実行されるものがほとんどです.例えば携帯電話端末には,通信機能やゲーム,ユーザ・インターフェースといったアプリケーション機能が搭載されており,これらの機能は複数のプロセッサ(CPUやDSP)で実現されています.つまり,このような機能を一つの装置として実現しているシステムは,必然的にマルチプロセッサ構成をとることになります.
ところで,上記の「マルチプロセッサ」と最近パソコンやゲーム機で使われているコンピュータとしての「マルチプロセッサ」では,少し論点が異なるように感じます.この点について,以下の三つの視点で整理したいと思います(図2).