組み込み分野における「マルチプロセッサ」とは ―― 多機能・低消費電力の要求にこたえるための技術的要素と課題
● 広く普及するためにはデバッグ環境の整備が必須
タスクやスレッドを実行するプロセッサがシステムの稼働中に決定されるような方式を動的負荷分散と言います.このようなシステムでは,特定のプロセッサ動作時にのみ発生する不ぐあいの再現やデバッグが困難になります.
また,一つのプロセッサで不ぐあいが発生すると,ほかのプロセッサの動作によっては,不ぐあいを起こした環境が破壊されてしまい,不ぐあいの再現や解析に支障をきたすことがあります.
このようなケースを防ぐため,プロセッサによっては個々のプロセッサの動作状態をほかのプロセッサに通知するしくみを持ったものがあります.このようなしくみを用いたデバッグ手法やツールの確立が必要となります.
上述した課題を解決するには,マルチプロセッサを使っていくうえで必要となるソフトウェアや開発環境の基盤を整備しなければなりません.ひとたび基盤が整えば,組み込み機器の分野でもマルチプロセッサを使いこなしていくことは難しいことではありません.
マルチプロセッサを使うことによって,組み込み機器ではこれまで考えられなかったような高性能,高機能機器が実現されていくものと考えています.
よしだ・まさやす
NECエレクトロニクス(株)
<筆者プロフィール>
吉田正康.1987年にNECに入社.以来AV機器向け,携帯端末向けのLSIを中心としたシステム・デザインを手がける.とくに,OSやミドルウェアなどのデバイスとソフトウェアのグレーゾーンを担当.現在は,カー・ナビゲーション・システムへのマルチプロセッサの展開を計画中.