センサのためのマイコンを選ぶ ──センサ利用のノウハウをファームウェアとして提供
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◆湿度を実感しよう◆
飽和水蒸気圧表(表4)からいろいろ読みとってみましょう.100℃のときの飽和水蒸気圧は約1013hPa,つまり1気圧です.これは水(お湯)が100℃で沸騰することから実感できます.100℃のお湯の水蒸気圧が外気圧の1気圧に打ち勝って,お湯の表面だけでなく内部からも蒸発する,つまりぐらぐらと泡が出て沸騰している状態です.100℃で湿度100%とは,コンビニエンス・ストアの肉まんのショーケースの中のような状態と考えると理解しやすいでしょう.
温度が下がって30℃のときの飽和水蒸気圧は約42hPaとなります.30℃で湿度100%といえば,梅雨どきの外気のような蒸し暑い状態です.といっても肉まんのショーケースの中からみれば,その絶対湿度(水分量)はたかだか4%程度ということになります.このように,湿度とは温度によって大きく左右される物理量であることがわかります.
エアコンの効いた室内から梅雨どきの室外へ出ると,メガネが曇ることがあります.例えば25℃に冷やされたメガネのレンズ周辺の空気は,外気温の30℃とたった5℃しか違いませんが,飽和水蒸気圧の比較で約34%も余分に水蒸気を含んでいるため,これがレンズ表面に凝集(水滴化)して曇りを生じるのです.このときの凝集熱(気化熱と同値)はレンズを温め,外気温30℃と同じになるまで,この現象は続きます.
さらに気温が下がった0℃の場合を考えます.0℃でもショーケースの約0.6%の湿度が存在しうる状態です.さらに,-20℃でも約0.1%の飽和水蒸気圧です.感覚的には,0℃以下だと水が凍るため湿度がなくなるような気がしますが,空気中に存在する水蒸気(水の分子)にはそのような不連続点はなく,-20℃でも微量の湿度があります.冷凍した食物は解凍すればおおむね元の状態に戻りますが,長く冷凍庫に入れっぱなしにした食物が乾燥してからからになってしまった,という経験はありませんか?
これはフリーズドライや寒天の製法で,凍ったまま低温で水分を蒸発させ,乾燥させる方法が成立します.このことから,0℃以下でも空気中に湿度(水分)が存在しうるということが理解できると思います.