つながるワイヤレス通信機器の開発手法(3) ――概要設計を行う
顧客の要求と開発工数のバランスで決まった製品機能が,時として使いかたやホストとの相性によって,性能が出ない場合がある(実際にBluetoothのあるチップセットではこのような事態が起きたようだ).これは,概要設計や詳細設計のときに,できたものに対するテスト方法を明確にせずに設計を進めたために起きた不ぐあいだと筆者は思う.概要設計や詳細設計のときに,単に「HCI伝送速度○○○bps」と決めるのではなく「△△△のテスト環境において×××の伝送テストを行った場合,○○○bps以上出ること」と規定していればどうなっていたか.このように詳細に規定していれば,どのような環境において顧客の要望を満足できるかを設計初期の段階で顧客確認することができただろう.また,製品完成時に意見が食い違うということもなかったと思う.
V字型設計手法では,これらの不ぐあいをなるべく少なくするため,設計仕様以外の仕様も決める.つまり,テスト仕様やテスト合格基準などを決めながら,設計を詳細化し,できた製品に対して設計段階で決めたテストとテスト合格基準に沿った評価を行う.
LSI設計の限定された部分についてのみであるが,テスト,評価に関する詳細事例が参考文献1),2)に書かれているのでそちらも参考にしてほしい.