つながるワイヤレス通信機器の開発手法(3) ――概要設計を行う
一般的にユーザ・インターフェースはソフトウェアで実現することが多い.かつては,画面のイメージ・スケッチを作ることが多かった.少し前は米国Microsoft社のVisual Basicを使用して電子紙芝居のようなものを作って製品企画を決めたり,顧客の要求を探ったりしていた.最近では,プロトタイピング・ツールが出てきており,それを使用してユーザ・インターフェースの概要設計をより詳細に進めているところが多いようだ.プロトタイピング・ツールはCASE(computer aided software engineering)ツールの一種で,携帯電話の世界ではキャッツの「ZIPC」などが使われている.
また,概要設計を行う手法としてSDL(System Description Language)やUML(Unified Modeling Language),SystemCといったハードウェア/ソフトウェアにとらわれない,機能の抽象表現を得意とする言語を使った手法も利用されている.これらの言語やツールの詳細は,参考文献3)に書かれている.興味ある方はそちらのほうを読んでいただきたい.
これらのツール類を使う使わないにかかわらず,アーキテクチャ(CPU,OS,ASICなどのさまざまな設計構成要素)を決める前に,アーキテクチャ非依存の概要設計に時間を割くことを,筆者は提唱したい.
参考・引用*文献
(1) 長谷川裕恭,「連載 HDLの記述スタイル 第9回 大規模回路のシミュレーション手法(その1)」,『Design Wave Magazine』,2001年12号,pp.100-105.
(2) 長谷川裕恭,「連載 HDLの記述スタイル 第10回 大規模回路のシミュレーション手法(その2)」,『Design Wave Magazine』,2002年2号,pp.130-135.
(3) 山崎正実ほか,「特集 組み込みソフトとSOCのシステム設計最前線」,『Design Wave Magazine』,2001年12月号,pp.36-85.
(4) 「心臓部は買えばいい,それがケータイを戦国時代に」,『日経エレクトロニクス』,2002年4月22日号.
おおた・ひろゆき
加賀電子(株)
◆筆者プロフィール◆
太田博之.20年近くにわたりGPS,携帯電話,ワイヤレスLAN,Bluetooth用システムおよびシステムLSI開発を経験.現在はBluetooth開発アライアンスhimicoプロジェクト(http://www.himico.com/)にコーディネータとして参加.システムLSI開発から次のフェーズへのステップアップを模索中.趣味は,あまたある標準通信規格をだれよりも早く理解すること.