つながるワイヤレス通信機器の開発手法(3) ――概要設計を行う
次に,仕様が規格化している範囲を考えてみる.上述したように,通信の世界ではほとんどの規格はOSI 7階層モデルで表されている(図3).OSI 7階層モデルは複雑で理解するのが難しいため,もう少し簡単なモデルを用いて,携帯電話,ワイヤレスLAN,Bluetoothの違いを示す(図4).
ワイヤレスLAN,Bluetooth,携帯電話では,それぞれ図4の左側の矢印の範囲が標準規格化されている.携帯電話の場合,単体で完結しているので,通信に使うアプリケーション(音声,Webブラウザ,メール処理用ソフトウェアなど)のほとんどの部分は規格化されている.ワイヤレスLANの場合は図1のように,パソコンに挿入して使用することが前提となっている.そのため,アプリケーションはパソコン上のアプリケーションとなる.ワイヤレスLANの仕様の中ではアプリケーションについては規定されていない.また,アプリケーションと通信の間のインターフェースについても,有線のLANで使われるEthernetに準拠した形になっているので,特に詳細には規定されていない(図5).
〔図3〕OSI 7階層モデル
通信の世界ではほとんどの規格はOSI 7階層モデルで表されている.
〔図4〕OSI 7階層モデルを単純化
携帯電話の機能を例に説明する.Webブラウザ,メール,音声の送受信の部分をアプリケーションと呼ぶ.アプリケーション・インターフェースは,無線で送受信するデータをアプリケーションで使える形に変換する機能である.アプリケーションで使えるデータ形式とは,アプリケーションがWebブラウザの場合はhtmlであり,音声の場合は8kHzサンプリングのディジタル・データになる.また,無線でデータを送受信する場合,途中でデータが壊れる場合がある.壊れたデータを誤り訂正で正しいデータに変換するなどの処理を通信制御が行う.無線回路は特に説明する必要はないだろう.
〔図5〕ワイヤレスLANの規格
図は,OSI 7階層モデルとワイヤレスLANの仕様書の関係を示したものである.802.2と802.1は,有線のLANと共通で規格化されている.