つながるワイヤレス通信機器の開発手法(11) ──ASICを設計する(中編) エラー訂正回路とタイミング回路の実装
2.正しく復調するためのタイミング・リカバリ
復調回路には同期検波回路,遅延検波回路などがあるが,ここでは比較的回路構成が簡単な遅延検波回路を説明する.
●復調回路の処理概要
遅延検波回路は,図7のように受信信号(DATA_IN)で1シンボル分遅延した信号の位相と現在の受信信号の位相の引き算を行い,その結果からデータを復調する.このように,遅延検波回路は前のシンボルと現在のシンボルの位相差の情報を持つ変調波に対して有効な復調回路であるため,差動PSK(DPSK:differential phase shift keying)と呼ばれる変調方式を使う場合に有効である.
図7では簡単にブロック図を表したが,このブロック図を実際の回路に変えるためには,前回,変調回路の説明で行ったような実数と2進数の変換をテーブル化して回路で表現しなくてはならない.今回の場合は,表2のように±180°の実数を2進数に見立てて回路を作成する必要がある.
〔図7〕遅延検波回路 遅延検波回路は,図のように受信信号(DATA_IN)で1シンボル分遅延した信号の位相と現在の受信信号の位相の引き算を行い,その結果からデータを復調する.引き算の演算を行う回路では入力と出力の間でビット幅が1ビット多くなる.
〔表2〕位相を2進数で表す
2の補数
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10進数
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8を180°とした場合
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0111
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7.5
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168.75
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0110
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6.5
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146.25
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0101
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5.5
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123.75
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0100
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4.5
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101.25
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0011
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3.5
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78.75
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0010
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2.5
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56.25
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0001
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1.5
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33.75
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0000
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0.5
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11.25
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1111
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-0.5
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-11.25
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1110
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-1.5
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-33.75
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1101
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-2.5
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-56.25
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1100
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-3.5
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-78.75
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1011
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-4.5
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-101.25
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1010
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-5.5
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-123.75
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1001
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-6.5
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-146.25
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1000
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-7.5
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-168.75
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