システム・イン・パッケージに組み込まれるMEMS慣性デバイス ──小型,高精度を生かすMEMSデバイスのキラー・アプリ
7)ワイヤレス歩数計
ご存じのように,歩数計は人間が徒歩で移動する際に速度や距離を測定する装置です.MEMSセンサを歩数計に応用すれば,鉛直平面における人間の歩行動作を検出できます.加速度計の出力は,鉛直平面の動作を定期的に示す信号となります.例えば,歩数計を靴に装着してワイヤレス通信で腕時計に測定値を表示させるといったことができます.これは,アスリートにとっての完ぺきなトレーニング・ツールとなります.
8)ビデオ・カメラと液晶プロジェクタの映像補正
MEMSジャイロスコープは,ビデオ・カメラの映像のぶれの補正などに特に有効です.一方,加速度計は液晶プロジェクタにおいて,映像を壁に投影する際の画像の補正(台形補正など)に利用されます.
9)産業分野における振動検出
加速度計を振動の周波数や大きさ(強度),スペクトラム(周波数領域)の測定に用いれば,産業用機械の故障診断などを行えます.
機械の振動がむだな電力消費の原因となったり,ベアリングやシール,基礎構造の磨耗を早めることはよく知られています.振動は,通常の場合,機械の調整不良やアンバランスによって発生しますが,測定した加速度信号のスペクトラム分析(FFT)によって検出することができます.
機械振動を放置しておくと性能の劣化やツール寿命の短縮,不快な騒音の原因となり,保守費用が増大します.これに対して,振動検出を実行することで潜在的なトラブルを特定して不ぐあいを未然に防止したり,予防保守を実施できるようになります.振動検出の典型的な応用例としては,洗濯機,乾燥機,エアコンなどの家電製品,および重工業製品などへの適用が挙げられます.
Barbara Grieco
STMicroelectronics社
◆筆者プロフィール◆
Barbara Grieco.イタリアのミラノ生まれ.ミラノのビジネス・スクールBocconi大学で国際経済の学位を取得.また,オランダのロッテルダムErasmus大学の経済科学で国際修士号を取得.1995年に財務管理課のグループ員としてSTMicroelectronics社に入社,主要顧客との戦略的提携を財務の面から支え,1998年にプリンタ・セクションに異動.主要顧客に対するビジネス・マネージャとなり,収益倍増に貢献した.2001年には新たな挑戦としてMEMSのマイクロフルイディック・デバイスである「lab-on chip」のバイオ・テクノロジ市場への事業発展のためにビジネス・デベロップメント・マネージャに任命される.2003年1月,MEMS BUのマーケティング・マネージャとなる.