システム・イン・パッケージに組み込まれるMEMS慣性デバイス ──小型,高精度を生かすMEMSデバイスのキラー・アプリ
2.エア・バッグに続くキラー・アプリは何?
最後に,MEMSセンサを用いて実現されるアプリケーションのいくつかを紹介します.
1)携帯機器の地図,文書,画像をスクロール
MEMS技術を応用した加速度計とSVG(scalable vector graphics)などのソフトウェアを組み合わせることにより,Webサイトや電子書籍,スプレッドシートのスクロールや拡大,移動に従来必要であったスイッチやボタン,あるいはサム・ホイールの操作が不要になります.これは,小さなボタンがもたらす操作性の悪さを解決します.
携帯電話やPDAのディスプレイは小さく,グラフィックス機能も制限されています.この問題も慣性センサの採用によって解決されるでしょう.慣性センサは傾斜/動きセンサとして機能し,表示される方向に入力を行うという人間の基本的な動作を検出したり,ダウンロードされたページの表示方法を単純化できます.機器を希望する方向に傾けるだけで,Webページや地図を自在にスクロールさせることができるようになります.
2)携帯機器のコンパス
MEMSセンサにより,携帯電話やPDAなどの携帯機器上で,より精密で使い勝手の良いコンパスを使用できるようになります.3軸磁気センサと2軸加速度計を搭載した慣性モジュールを利用すれば,機器の位置や傾きに関係なくコンパスを読み取れます.加速度計が機器の傾斜を補正し,コンパスの測定結果を正確な値にします.
3)携帯機器向けゲーム
10代の若者を顧客ターゲットとする企業にとって,携帯機器にゲームを組み込むことは必須事項であり,使いやすいユーザ・インターフェースは非常に魅力的です.MEMSセンサにより,片手での操作とジェスチャ入力認識が可能になり,動作そのものが「マウス」の代わりとなります.加速度計が手の動きを検知することで,より使い勝手のよいユーザ・インターフェースを実現します.