ネットワーク経由で組み込みソフトのバグを修正する ――後からモジュールを追加できるITRON仕様OSの開発

原田雅章

tag: 組み込み

技術解説 2003年7月28日

3.今後は設備機器や家電の更新も視野に

 本開発は,メモリ保護機能を持つITRON仕様OSにローダ機能を付加する形で実現しました.そのため,MMU機能を持ったプロセッサを対象に開発を行いましたが,組み込み機器の大部分にはMMU機能を持たない低価格のプロセッサが搭載されています.今後の開発テーマの一つとして,MMU機能を持たないプロセッサへのローダ機能の実装を考えています.

 運用形態としては,携帯電話に代表されるようなユーザ・インターフェース機能を持つクライアント機器を想定しました.クライアント側の要求によって発生する通信セッションでアドレス・リンクを解決するという運用形態です.しかし,サーバ側の要求による一斉ソフトウェア更新(図14)や,携帯電話を利用した家電機器の組み込みソフトウェアの更新(図15),さらにはリムーバブル・メディアを使用したオフライン・バージョンアップ(図16)にも今回開発した技術は適用可能です.このようなさまざまな運用形態への対応も,今後の開発テーマの一つとして考えています.

 今回開発したOS技術に関するソース・コード(カーネル,ローダ,コンフィグレータ)はオープン・ソースとして公開する予定です 注6.また,パソコン用シミュレータとバイナリ・パッチ機能については,エーアイコーポレーションが同社の製品として販売する予定です.

注6:

正確には,使用したことを報告する義務がある「レポートウェア(いわゆるTOPPERSライセンス)」として公開する予定.


f14_01.gif
〔図14〕設備に隠ぺいされた機器のバージョンアップ
サーバ側から複数の機器の組み込みソフトウェアを一斉に更新する例.

f15_01.gif
〔図15〕携帯電話を利用した家電製品のバージョンアップ
携帯電話を操作することにより,家電製品の組み込みソフトウェアを更新する例.

f16_01.gif
〔図16〕オフラインによるバージョンアップ
フロッピ・ディスクなどによってロード・モジュールを更新する例.

参考・引用*文献  (1) トロン協会,『μITRON4.0仕様(ver4.01.00)』,トロン協会,2001年.
 (2) トロン協会,『μITRON4.0仕様 保護機能拡張(ver1.00.00)』,トロン協会,2002年.
 (3) TRONプロジェクトのホームページ http://www.tron.org/


はらだ・まさあき
(株)エーアイコーポレーション

◆筆者プロフィール◆
原田雅章.エーアイコーポレーション 開発部に所属.IPAの成果発表(IPA Spring)に本開発製品を出展した.NHKの番組『プロジェクトX』でTRON特集が放送されたこともあってか,併設開催されていたビジネスシヨウから興味本位で訪問者が続出.あらためてプロジェクトX効果を痛感した.

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