Freescale JM Badge Boardを使ってSensor and Locationプラットフォームを動かす ―― センサ応用システムの開発を助けるWindows 7の新機能

日高 亜友

tag: 組み込み Interface

技術解説 2010年7月 1日

 Windows 7では,「Sensor and Location プラットフォーム」という機能を提供しています.これは,Windowsを搭載したコンピュータとセンサ・デバイスを接続する方法を標準化するための枠組み(プログラム・モデル,ドライバ・インターフェース)です.ここでは,Sensor and Locationプラットフォームの実質的なリファレンス・モデルとなっている米国Freescale Semiconductor社のColdFireマイコン基板「JM Badge Board」を利用して,Sensor and Locationプラットフォームを動作させる手順について解説します.(編集部)

 ここでは,米国Freescale Semiconductor社が提供している評価ボード「JM Badge Board」の概要と,このボードにWindows 7の新機能であるSensor and Locationプラットフォームを実装して動作させる方法を説明します.Sensor and Locationプラットフォームは,組み込みシステム開発の観点からとても興味深い機能です.この新しい機能の動作を,安価な評価ボードを使って確認してみます.

 

 

1.JM Badge Boardとは

 Freescale社のJM Badge Board(以降,Badgeボード)は,同社のColdFireファミリの32ビット・マイクロコントローラ「MCF51JM128」を搭載した評価ボード・パッケージです(写真1).



写真1 JM Badge Boardの外観

 

●マイコン,バッテリ,センサ,LED表示,赤外線,スピーカを搭載

 MCF51JM128は,MC68000の流れをくむレジスタ・セットと命令セットを備えています.以下にMCF51JM128の仕様の概略を記載します.

  • 32ビット・アーキテクチャ「ColdFire V1」,最大50.33 MHz動作
  • BDMデバッグ・インターフェース
  • 4種類の低消費電力モード
  • 暗号化加速ユニット,乱数生成アクセラレータ
  • 128 Kバイトのオンチップ・フラッシュROM,16 KバイトのオンチップSRAM
  • USB 1.1/2.0 ホスト/ターゲット/OTGサポート(PHY内蔵)
  • 12チャネルの12ビットA-Dコンバータ,アナログ・コンパレータ,リアルタイム・クロック,タイマ
  • SCI(非同期シリアル)×2,SPI×2,I2C×2,CAN,GPIO×66,高速GPIO×16

 Badgeボードは,さらに次のような周辺機能を備えています.

  • USB充電可能なリチウムイオン2次電池(MC34673 チャージャ利用)
  • 3軸加速度センサ(MMA7260QT)
  • 照度センサ(Rev. D以降)
  • 静電タッチ・センサSW(MPR084)×8パッド
  • 16×5マトリックスLEDによる表示機構
  • 赤外線送信器(Rev. C以降)
  • スピーカ
  • 拡張用SD/MMCカード・ソケット・パターン
  • 拡張用2.54mmピッチ・スルーホール・ヘッダ

 これにより,BadgeボードはマトリックスLEDによる文字や図形の表示,および8個のタッチ・センサSW(スイッチ)入力によるユーザ・インターフェースなどを実現できます.また,BadgeボードはColdFireの評価ボードとしてだけではなく,マイクロコントローラの学習やセンサ類の実験,USBを介してパソコンと接続するターゲット・デバイスの実験など,さまざまな用途に利用されています.図1にBadgeボードのブロック図を示します.



図1 JM Badge Boardのブロック図

 

●専用の情報配信ページでユーザをサポート

 Freescale社では,Badgeボードの利用者のために,http://www.canyourbadgedothis.com/ という専用の情報配信ホームページを用意しています.長い名前なのですが,「CAN YOUR BADGE DO THIS ?」というこのボードのキャッチ・フレーズをそのままURLにしています.このURLは,デモ・アプリケーション起動時にマトリックスLED に表示されます.このWebサイトの下には,日本語版サイト http://japan.canyourbadgedothis.com/ も用意されています.このWebサイトでは,次のような情報が入手可能です.

  • 操作マニュアル,回路図,データシート
  • 開発ツールとサンプル・プログラム,ソフトウェア関連情報
  • 日本語マニュアル
  • 開発者用「Freescale Forum」(英語)へのリンク
  • 入門用ビデオ画像

 実はこのサイトはもともと,2008年に実施されたソフトウェア開発コンテスト「Design Challenge」のページだったので,「コンテストへの参加登録」や「入賞者の作品ビデオ」などのリンクもあります.

 

●Windows環境で開発するならCodeWarriorが便利

 Badge ボードのソフトウェア(ファームウェア)開発には,GCCを含む各種のColdFire用クロス・コンパイラを利用できますが,Windows環境で開発する場合には,同社の統合開発環境であるCodeWarriorを利用するのが一番便利です.

 上記のホームページの左側のメニューにある「Badge Board Tools and Software」をクリックすると,http://www.canyourbadgedothis.com/ContestTools.aspxへ移動します.このページでは,LEDApp.zip(LEDアプリケーション)とJM_Badge_Board.zip(デモ・アプリケーションとブートローダ)の2種類のソース・コードが,CodeWarriorプロジェクト付きで公開されています.ただしこれらのサンプルは,CodeWarriorの最新メジャー・バージョンである7.x用ではなく,6.x用なので注意が必要です.

 このページの中央の「CodeWarrior Development Studio for Microcontrollers v6.2」の下にある「Follow this link and click on Download Evaluation」をクリックすると,「CodeWarrior for Microcontrollers (RS08/HC(S)08/ColdFire V1)」のページに進みます.このページで「Download Special Edition」をクリックしてV6.3のSpecial Editionを入手するか,「Download evaluation versions, software updates & patches」をクリックしてV6.3のEvaluate Versionを入手してインストールすることで,開発環境を構築できます.

 Evaluate Version の入手にはユーザ登録が必要で,30日間使用できます.Special Editionに生成するコード・サイズに制限があり,Badgeボードのデモ・アプリケーション(JM_Badge_Board.zip)のようにバイナリで64Kバイトを超えるオブジェクト・プログラムをmakeコマンドでビルドすることはできません.制限容量を超えるオブジェクトをmakeするためには,Evaluate Versionが必要です.

 このほか,デモ・アプリケーション(JM_Badge_Board.zip)のソース・コードはもともとV6.2用に書かれているため,V6.3環境ではmake時にエラーとなり,またエラー対策を施してもUSB機能が動作しないという別の問題があります.配布ソース・コードの書き換えに期待しています.

 

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