ネットワーク経由で組み込みソフトのバグを修正する ――後からモジュールを追加できるITRON仕様OSの開発
2.ソフトウェア開発の概要
本プロジェクトで開発したソフトウェアは,大別すると4種類になります(図10).
1)ダウンロードの対象となる機器側のシステム
今後,携帯機器で広く使われることが予想されるARM 920Tプロセッサを使用した機器を対象に開発を行いました.
2)ダウンロード・サーバ側のシステム
また,この機器と通信して協調動作するダウンロード用サーバ・システムについては,サーバOSに無償オープン・ソースOSとして広く使用されているLinuxを選択して開発しました.
3)コンフィグレーション・ツール
μITRON4.0仕様のシステム・コンフィグレータ機能に対してローダ機能拡張を行った「システム・コンフィグレータ」と,新たなツール「モジュール・コンフィグレータ」を開発しました.
4)パソコン用シミュレータ
また本開発の成果物を利用した機器開発を支援するツールとして,パソコン上で動作するシミュレータを開発しました.このシミュレータは,今回開発したμITRON仕様OSをパソコン上で実行し,C言語レベルでユーザ・アプリケーション・プログラムを検証できるようにするものです.現在,ある程度規模の大きい組み込みソフトウェア開発では,ハードウェア開発とソフトウェア開発が並行して行われています.また,開発した機器やデバッグ機材は開発者全員に行き渡らない状況が多いかと思います.パソコンをクロス開発のプラットホームとして利用できれば,開発期間の短縮に貢献すると考えました.
またオプションとして,ベース・モジュールにバグがあった場合のバイナリ・パッチ機能も合わせて開発しました(コラム「バイナリ・パッチ機能」を参照).
〔図10〕ソフトウェア開発の概要
機器側のシステム,サーバ側のシステム,開発時に必要なコンフィグレーション・ツール類のほか,クロス開発に利用できるパソコン用シミュレータを開発した.