PCI Express デザイン・ガイド ――LSI開発者のための設計Tips
●PCI Expressハードウェア仕様
PCI Expressは,現在のパソコンの製造コストに悪影響を与えないように,チップはCMOS,基板は4層のFR4で,20~30インチの配線長を実現できることを目標に策定されています.
先ほども述べたように,信号はポイント・ツー・ポイントの差動信号なので,片方向に2本,双方向で4本の信号線が1レーンに相当します.x4リンクの場合は合計16本です.
エンベデッド・クロックという技術を採用しているので,クロック信号はありません.クロックのタイミングはデータ信号の中に埋め込まれており,受信側でデータ信号のクロス・ポイントをもとにクロックを抽出します.
また,連続した'0'や'1'が続かないように(長い期間クロス・ポイントが存在しない状態が続かないように)するため,8b/10bエンコーディングを行います(図10).
8b/10bエンコーディングはもともとIBM社が開発した技術で,8ビットのデータを,連続した'0'や'1'を排除した10ビットのデータに拡張するコード変換です.ギガビットEthernetやFibre Channelでも用いられています.
この8b/10bエンコーディングと,エンベデッド・クロックを併用するとクロック信号を配線する必要がなくなり,高周波の基板設計に有効です.しかし,実効転送量が80%になってしまうというデメリットがあります.
リンク上にクロックはありませんが,ポートの基準クロックは同じポートに対して同じクロックが使用されることを想定しています.受信側も同様です.レーンごとの周波数は±300ppmの違いを許しています(図11).
〔図10〕8b/10bエンコーディング
8b/10bエンコーディングは,8ビットのデータを,連続した'0'や'1'の少ない10ビットのデータに変換する技術である.例えば,00Hは1001110100に変換される.PCI Expressでは,クロックはデータ信号の中に埋め込まれるので,基板配線の制約が緩和される.しかし,このエンコード方式によって,実効転送量が80%になってしまうというデメリットがある.
〔図11〕 物理層の参考回路図