フレッシャーズのための組み込みソフト開発講座 ――新人エンジニアがまわりの信頼を勝ち得るには...

宿口雅弘

tag: 組み込み

技術解説 2002年3月14日

●失敗に学ぶ

 初心者に失敗はつきものです.失敗したことを自覚し,何が原因であったかを調べれば,同じ失敗を繰り返すことはなくなります.先輩たちが失敗しないのは,かつて失敗を経験してきたからだと思います.過去の経験から,あらかじめ危険なところを予測し,適切に対策を打っているので,失敗していないように見えるのです.自分だけでなく他人の失敗についても,それを笑うのではなく,自分の問題として理解すると,似たような失敗を回避できます.ただし,失敗したことを自覚できないような人は,どうしようもありませんが....

 ご存じのように,現在,開発の現場の多くは,納期,コストともに非常に厳しい状況にあります.未熟なエンジニアを現場に投入する余裕は,実はありません.経験を積ませなければエンジニアとしての成長がないことは重々承知しているのですが,「未熟なエンジニアを実戦投入することによるコストや工数の増加は避けたい」というのが会社側(設計管理者)の本音だと思います.新人エンジニアを現場に投入すると,最低1人は中堅エンジニアを張り付けることになります.その結果,中堅エンジニアは新人エンジニアの指導やフォローに時間を取られてしまい,自身の作業に影響が出ます.全体として見れば生産性が落ちるのです.

 そのため,未熟なエンジニアを実戦に投入するとき,どうしても雑用的な仕事しか渡せないことがよくあります.あるいは,本格的な仕事を渡しても,失敗させてやる余裕がないので,細かく先輩がフォローすることになり,結局,新人エンジニアはその開発プロジェクトから何も新しいことを学ばなかったということになりがちです.その一方で,新人エンジニアは,実は何もしていないのに,仕事を成し遂げたという誤った達成感を持ってしまうことがあります(図5)

 失敗させたときの先輩たちの対応にも問題があると思います.新人エンジニアが失敗したとき,時間がなくて,失敗のフォローをその新人自身にさせるのではなく,先輩エンジニアがしてしまうという状況をときどき見かけます.これだと,仕事で失敗してもペナルティが発生することがありません(あっても,叱られる程度).その結果,新人エンジニアは「失敗してもだれかがフォローしてくれる」といういいかげんな認識を持ってしまうケースがあります.フォローしてくれる先輩たちがいる間はこれでもなんとかなるのですが,その先輩がいなくなり,自分が製品に対して技術的責任を負うような立場になったとき,さて,どうなるのでしょう?

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〔図5〕新人エンジニアは誤った達成感を持ってしまうことがある
未熟なエンジニアに本格的な仕事を渡した場合,失敗させてやる余裕がないので,細かく先輩がフォローすることになる.新人エンジニアはその開発プロジェクトから何も新しいことを学ばなかったにもかかわらず,「仕事を成し遂げた」という誤った達成感を持ってしまうことがある.

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